CARFとは?暗号資産の税務情報は誰に・いつ共有される?届出義務と注意点

CARF(暗号資産等報告枠組み)は、国境をまたぐ暗号資産取引の情報を、各国・地域の税務当局が交換するための国際基準です。日本では2026年から、暗号資産交換業者などが利用者の税務上の居住地国を確認する手続が始まりました。
利用者がまず押さえる結論
- 日本だけが税務上の居住地国でも、対象の交換業者などへ居住地国等の届出が必要
- 既存利用者の法定期限は原則2026年12月31日。2026年以後の新規利用者は対象取引を行う際に提出
- 国内事業者から税務署へCARF報告されるのは、特定の非居住者に関する情報
- CARFは税率や確定申告を変える制度ではなく、届出をしても取引記録と申告は別に必要
「日本居住者も提出するのに、報告対象は非居住者」という点が分かりにくいところです。この記事では2026年7月22日時点の国税庁資料を基に、利用者の届出、事業者から税務署への報告、税務当局間の国際共有を分けて説明します。
CARFとは?暗号資産取引情報を国際共有する基準
CARFは「Crypto-Asset Reporting Framework」の略です。暗号資産等を使った国際的な脱税・租税回避に対応するため、OECDが策定しました。
基本的な流れは、次の3段階です。
| 段階 | 誰が誰へ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1. 居住地国の届出 | 利用者 → 暗号資産交換業者等 | 氏名、住所、税務上の居住地国、外国の納税者番号など |
| 2. 国内報告 | 国内事業者 → 国税当局 | 特定の非居住者に関する本人・取引情報 |
| 3. 国際共有 | 日本の税務当局 ↔ 居住地国の税務当局 | 租税条約等と当局間合意に基づく自動的情報交換 |
日本では2026年に利用者の居住地国を特定する手続を始め、2027年に国内事業者から2026年分の報告を受け、税務当局間の情報交換を開始する予定です。国内事業者の報告期限は、原則として対象年の翌年4月30日です。
CARFだけで「全取引が全世界へ共有」されるわけではない
実際の国際共有は、利用者の居住地国、事業者の所在国・制度、報告対象国、税務当局間の合意などで決まります。「暗号資産を持つ人の全情報が無条件に全参加国へ送られる」という理解は正確ではありません。
誰が届出をする?日本居住者も対象
国内の対象事業者を通じて暗号資産等取引を行う人は、居住地国が日本か外国かにかかわらず、新規届出書を提出する必要があります。日本居住者を最初から除外せず、届出内容を基に居住地国と報告対象者を判定する仕組みだからです。
| 利用状況 | 提出時期 | 確認すること |
|---|---|---|
| 2026年1月1日以後に対象取引を始める | 暗号資産等取引を行う際 | 口座開設・取引前後の届出画面を完了する |
| 2025年12月31日時点で既に取引している | 2026年12月31日まで | 各社からの通知、登録情報の確認依頼を確認する |
| 届出後に居住地国等が変わった | 異動日から3か月を経過する日まで | 提出先の事業者へ異動届出を行う |
実際の操作は事業者により異なります。専用フォームを設ける会社もあれば、基本情報の確認・更新を法定届出として扱う会社もあります。法定期限より前にサービス上の確認期限が設けられる場合もあるため、メールだけでなく、公式アプリやログイン後のお知らせも確認しましょう。
税務上の居住地国とは
税務上の居住地国は、単に現在いる国、国籍、取引所へ登録した住所だけで決まるとは限りません。一般には、その国の法令に基づいて税務上の居住者として扱われる国・地域を指します。
海外赴任、長期滞在、移住、二拠点生活などでは、複数国の税法や租税条約が関係することがあります。住所と居住地国が違う場合や、複数の居住地国が考えられる場合は、推測で入力せず、該当国の税務当局または国際税務に詳しい税理士へ確認してください。
日本居住者の情報は誰に共有される?
日本国内の事業者は、CARFに基づき、特定の非居住者に関する暗号資産等取引情報を日本の税務署へ報告します。日本だけを税務上の居住地国とする人は、届出自体は必要ですが、国内事業者が行う「非居住者情報の国際共有」の対象とは通常分けて扱われます。
一方、日本の税務上の居住者が、CARFを実施する外国・地域に所在する対象事業者を利用している場合、その国・地域から見れば非居住者となり得ます。現地制度と当局間合意の条件を満たすと、その事業者から現地税務当局へ報告され、さらに日本の税務当局へ情報が送られる可能性があります。
海外取引所なら必ず日本へ報告される、という意味ではありません
これはCARFの基本構造からみた一般論です。対象事業者に該当するか、所在国がいつ制度を実施するか、日本との情報交換合意があるかで結果は変わります。反対に、共有されないと思い込んで申告を省いてよいわけでもありません。
どのような情報・取引が報告対象になる?
国税庁FAQでは、国内事業者から税務署へ提供される情報として、次のような項目が示されています。
- 氏名・住所、法人の場合は名称・所在地
- 税務上の居住地国
- 外国の居住地国で持つ納税者番号
- 暗号資産等の種類
- 種類ごとの売却・購入の対価の合計額など
日本のマイナンバーは、国内事業者がCARFに基づいて税務署へ提供する報告事項とはされていません。ただし、本人確認など別の法令・手続で個人番号カードを提示する場面とは切り分けて考える必要があります。
対象となる取引は、円などの法定通貨との売買だけではありません。
| 取引類型 | 例 |
|---|---|
| 売買 | 円で暗号資産を買う、暗号資産を売って円にする |
| 暗号資産同士の交換 | ある暗号資産を別の暗号資産へ交換する |
| 媒介・取次ぎ・代理 | 事業者が顧客の交換取引を仲介する |
| 移転・受入れ | 事業者を通じた暗号資産の送付・受取 |
自己管理ウォレットを持っていることだけで、直ちに国内事業者のCARF報告と同じ扱いになるとは限りません。しかし、交換業者を経由する入出庫や移転は対象取引に含まれ得ます。ウォレットへ移せば取引履歴や税務上の所得が消える、ということではありません。
CARFで変わらないこと
CARFは、税務当局が国境をまたぐ取引情報を交換するための制度です。CARFの開始だけを理由に、暗号資産の税率や所得区分が変わったり、届出が確定申告の代わりになったりするわけではありません。
| CARFで行うこと | 別に必要なこと |
|---|---|
| 居住地国等を事業者へ正確に届け出る | 取引ごとの取得価額、手数料、交換、送受信を記録する |
| 事業者・税務当局が対象情報を報告・交換する | 日本の税法に従って所得を計算し、必要なら確定申告する |
| 居住地国の変更を届け出る | 転居・海外移住時の個別の課税関係を確認する |
暗号資産を別の暗号資産へ交換した場面や、複数取引所・ウォレット間で移動した場面は、後から取得価額を追いにくくなります。取引所からダウンロードできる年間取引報告書やCSVだけに頼らず、送付先・受取元と自分のウォレット間の移動が分かる記録も残しておくと確認しやすくなります。
利用者が今やること
- 利用している国内外の取引所・販売所を一覧にする
- 各社の公式アプリ、ログイン後のお知らせ、登録メールを確認する
- 氏名、住所、税務上の居住地国、外国の納税者番号を正確に入力する
- 海外居住歴や複数居住地国がある場合は、判定根拠を確認してから提出する
- 転居や居住地国の変更後は、原則3か月以内に各提出先で更新する
- 取引履歴、年間報告書、ウォレット移動記録を保存し、確定申告を別に行う
メールやSMSのリンクから個人情報を入力させるフィッシングにも注意が必要です。通知を受け取ったら、リンクをそのまま開くのではなく、ブックマークや公式アプリから取引所へログインし、同じ案内が表示されているか確かめると安全です。
未提出や虚偽記載には罰則がある
国税庁FAQによると、新規届出書を期限までに提出しない、または虚偽の記載をして提出するなどした人は、居住地国が外国である場合、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。
日本居住者にも届出義務がある一方、FAQに示されたこの罰則の対象条件には「居住地国が外国である者に限る」とあります。だからといって日本居住者が未提出でよいという意味ではありません。事業者の規約・運用により、取引開始不可、利用制限、情報更新の再要求などが行われることもあるため、各社の案内に従って期限内に提出してください。
よくある質問
日本に住み、日本で納税していても届出は必要ですか?
必要です。居住地国が報告対象国かどうかを問わず、対象取引を行う人は居住地国等を記載した届出書を提出します。日本だけが居住地国の場合も「日本」と正確に届け出ます。
既に本人確認やCRSの届出をしていれば不要ですか?
本人確認や金融口座情報のCRS届出とCARFの新規届出は制度が異なります。事業者が既存情報をどのように確認・提出画面へ反映するかは各社で異なるため、CARFに関する案内を別に確認してください。
CARFの届出をすれば確定申告は終わりますか?
終わりません。CARFは居住地国の確認と情報報告・交換の仕組みです。暗号資産取引の所得計算と、日本の税法上必要な確定申告は別に行います。
海外取引所や自己管理ウォレットなら申告しなくてよいですか?
いいえ。CARFで情報交換されるかどうかと、日本で所得を申告する義務があるかどうかは別問題です。海外取引所や自己管理ウォレットの利用だけを理由に申告不要とは判断できません。
まとめ
CARFにより、日本では2026年から暗号資産利用者の税務上の居住地国を特定する手続が始まりました。日本居住者を含む対象利用者は交換業者などへ届出を行い、国内事業者は2027年から特定の非居住者に関する前年分の情報を税務署へ報告します。その後の国際共有は、租税条約等と当局間合意に基づいて行われます。
まずは各取引所の公式画面で届出状況を確認し、住所・居住地国・外国の納税者番号を正確に提出しましょう。同時に、CARF届出と確定申告は別であることを押さえ、売買・交換・送受信の記録を継続して残すことが重要です。
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参考にした公式情報
- 国税庁「暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報」(2026年7月22日確認)























