残価設定型・バルーン型住宅ローンとは?住信SBIネット銀行と楽天銀行の新しい住宅ローンを比較

住宅価格の高騰を背景に、毎月返済を抑える新しい住宅ローンが増えています。住信SBIネット銀行は2026年6月1日、通常返済と期日一括返済を組み合わせる「期日一括返済併用型住宅ローン」の取扱いを開始しました。楽天銀行は、JTI(移住・住みかえ支援機構)の残価保証を組み合わせた「残価設定型住宅ローン」を提供しています。
どちらも「毎月の返済額を抑えやすい」という点では似ていますが、仕組みはかなり違います。住信SBIネット銀行は、担保評価額の50%に相当する元金を期日に一括返済するバルーン返済に近い設計です。一方、楽天銀行は、残価設定月以降に返済額軽減オプションや買取オプションを選べる、JTIの残価保証を使った仕組みです。
この記事では、公式情報をもとに、それぞれの特徴、契約者側のメリット・デメリット、選ぶ前に確認したいポイントをわかりやすく整理します。
この記事の結論
- 住信SBIネット銀行は、マンション向けに元金の一部を据え置き、期日に一括返済するハイブリッド型。
- 楽天銀行は、JTIの残価設定月以降に返済額軽減または買取を選べるオプション型。
- どちらも毎月返済を抑えやすいが、元金が残りやすく、総支払額や出口戦略の確認が重要。
- 住信SBIは将来の売却価格を保証しない。期日までに全額返済が必要。
- 楽天銀行はJTIの買取オプションがあるが、対象住宅・住宅メーカー経由など利用条件が限られる。
- 「買える家を広げるローン」ではなく、「将来の売却・住み替えまで設計できる人向けのローン」と考えたい。
残価設定型・バルーン型住宅ローンとは
一般的な住宅ローンは、借りた元金と利息を毎月少しずつ返済します。元利均等返済なら毎月返済額を一定にし、元金均等返済なら元金を一定額ずつ減らしていく形です。
これに対して、残価設定型やバルーン型の住宅ローンは、借入元金の一部を将来まで残す設計になります。毎月返済で全額を均等に減らすのではなく、将来の一定時点に一括返済したり、売却・買取・返済額軽減などの選択肢を組み合わせたりします。
| タイプ | 基本イメージ | 契約者が注意する点 |
|---|---|---|
| 通常の住宅ローン | 元金と利息を毎月返済し、満期までに完済する | 毎月返済額は上がりやすいが、元金は計画的に減る |
| バルーン型 | 元金の一部を据え置き、最後や一定期日にまとめて返す | 将来の一括返済資金、売却、借換えの見通しが必要 |
| 残価設定型 | 将来の住宅価値を前提に、一定時点で返済軽減や買取などを選ぶ | 対象住宅、維持管理、残価設定月、買取条件を確認する |
月々の返済額だけを見ると魅力的ですが、元金の一部が残りやすい点が最大の特徴です。住宅ローンを比較するときは、金利だけでなく、総返済額、残債、売却時の出口まで見る必要があります。基本的な比較軸は住宅ローンの比較ポイントでも整理しています。
住信SBIネット銀行の期日一括返済併用型住宅ローン
住信SBIネット銀行が2026年6月1日に開始した「期日一括返済併用型住宅ローン」は、公式発表ではハイブリッド型の住宅ローンと説明されています。担保評価額の50%に相当する元金を、あらかじめ定めた期日に一括返済する方式と、残りの元金を通常の住宅ローンとして返済する方式を組み合わせる仕組みです。
期日一括返済型で借りた部分は、毎月は利息のみを支払います。残りの元金は、元利均等返済または元金均等返済で返済します。つまり、毎月の返済負担は抑えやすい一方、将来の一括返済部分は残ります。
| 項目 | 住信SBIネット銀行の内容 |
|---|---|
| 商品名 | 期日一括返済併用型住宅ローン |
| 開始日 | 2026年6月1日 |
| 対象物件 | 東京23区、横浜市、川崎市、大阪市の担保評価額1億円以上の新築・中古マンション |
| 年収条件 | 前年年収1,000万円以上。ペアローンはどちらか一方が1,000万円以上 |
| 融資金額 | 500万円以上3億円以下 |
| 返済期間 | 最長35年 |
| 金利 | 通常の金利に年0.350%上乗せ(2026年6月時点) |
| 事務取扱手数料 | 融資金額の2.20%(税込) |
| 申込方法 | 代理店・提携事業者経由。ネット申込不可 |
この商品は、都市部の高額マンションを対象にしたローンです。誰でも使える住宅ローンではなく、対象エリア、物件評価額、年収条件がかなり絞られています。
住信SBIネット銀行のメリット
契約者側のメリットは、毎月返済額を抑えながら高額マンションを取得しやすくなる点です。通常の35年ローンで全額を返済しようとすると毎月返済が重くなるケースでも、元金の一部を期日一括返済に回すことで、当面のキャッシュフローを軽くできます。
- 毎月返済額を抑えやすい。
- 50年ローンを使いにくい年齢層でも、返済負担を調整しやすい。
- 10年から15年後の住み替えを前提にした資金計画を組みやすい。
- 資産価値が落ちにくい都心・大都市圏マンションを買う人には選択肢になる。
- 変動金利タイプと固定金利特約タイプを選べる。
特に、将来の住み替えを前提にする人には相性があります。購入時から「一生住む家」ではなく、「一定期間住み、売却または借換えで出口を作る家」として考えるなら、毎月返済を抑える効果は大きいです。
住信SBIネット銀行のデメリット
一方で、住信SBIネット銀行のローンは、将来の物件価格を保証する商品ではありません。公式発表でも、将来の物件価格を保証するものではなく、借入金額は返済期日までに全額返済する必要があると明記されています。
- 期日に一括返済する元金が残る。
- 売却価格が残債を下回ると、自己資金で不足分を埋める必要がある。
- 金利が年0.350%上乗せされるため、通常ローンより利息負担が増えやすい。
- 対象物件が高額マンション中心で、利用できる人が限られる。
- ネット申込不可で、代理店・提携事業者経由になる。
- 資産価値が想定より下がると、住み替え戦略が崩れる。
この商品は、家計に余裕がない人が無理に借入額を増やすための商品ではありません。むしろ、売却・借換え・繰上返済の出口を自分で管理できる人向けです。住宅ローンは毎月返済だけでなく、将来の資金繰りが重要です。詳しくは住宅ローンは総返済額だけでなく資金繰りで考えるも参考になります。
楽天銀行の残価設定型住宅ローン
楽天銀行の残価設定型住宅ローンは、楽天銀行住宅ローン(金利選択型)に、JTIが設定する残価設定月以降に行使できる2つのオプションを付けた商品です。公式ページでは、返済額軽減オプションと買取オプションが案内されています。
楽天銀行の公式プレスリリースでは、2023年6月1日から金利選択型の残価設定型住宅ローンの取扱いを開始したと説明されています。2026年時点でも商品ページが掲載されており、現在確認できる公式ページでは、楽天銀行と契約した住宅メーカー経由での申込みとなり、WEB経由の申込みは対象外とされています。
| 項目 | 楽天銀行の内容 |
|---|---|
| 商品名 | 残価設定型住宅ローン |
| 基本構造 | 楽天銀行住宅ローン(金利選択型)にJTIの残価関連オプションを付加 |
| 主なオプション | 返済額軽減オプション、買取オプション |
| 申込経路 | 楽天銀行と契約した住宅メーカー経由。WEB申込は対象外 |
| 対象住宅 | 公式ページでは認定長期優良住宅であることなどが前提として示されている |
| 特徴 | 残価設定月以降に、住み続ける・返済を軽くする・手放す選択肢を持てる |
住信SBIネット銀行の商品が「期日に一括返済する元金を残す」設計なのに対し、楽天銀行の残価設定型は「残価設定月以降の選択肢を持つ」設計です。ここが大きな違いです。
楽天銀行のメリット
楽天銀行の残価設定型住宅ローンのメリットは、将来の返済負担や住み替えに備えられる点です。公式ページでは、JTIが設定した残価設定月以降、返済額軽減オプションを使うことで月額返済額を大きく軽減できると案内されています。
- 残価設定月以降に、返済額軽減オプションを選べる。
- 買取オプションにより、住宅を手放せば住宅ローンを解消できる選択肢がある。
- 住み替え、親との同居、子どもの独立、老後の生活設計に対応しやすい。
- オプションなので、行使せずに通常どおり完済することもできる。
- 住宅が値上がりしている場合は、オプションを使わず自分で売却する選択もある。
「定年後に返済が重くなったらどうするか」「家を手放すときに残債が残らないか」という不安を軽くしたい人に向く商品です。長く住む前提でも、将来の選択肢を確保したい人には安心材料になります。
楽天銀行のデメリット
楽天銀行の残価設定型住宅ローンは、通常の住宅ローンのように誰でも自由に申し込める商品ではありません。楽天銀行と契約した住宅メーカー経由での申込みとなり、対象住宅や残価設定の条件があります。
- WEBから直接申し込めない。
- 対象となる住宅メーカー・住宅が限られる。
- 認定長期優良住宅など、住宅性能や維持管理が重要になる。
- 返済額軽減オプションを使うと、元金返済が少なくなり、利息負担が長く続く可能性がある。
- 買取オプションを使うには、住宅を手放す必要がある。
- 制度やオプションの条件を理解せずに契約すると、将来の選択肢を誤解しやすい。
特に注意したいのは、「買取オプションがあるから家の価値が必ず守られる」と単純に考えないことです。買取オプションは住宅を手放す選択肢とセットです。住み続けたいのか、将来住み替える可能性があるのか、家族の意向も含めて考える必要があります。
住信SBIと楽天銀行の違い
両者の違いを表にすると、かなり性格が違うことがわかります。
| 比較項目 | 住信SBIネット銀行 | 楽天銀行 |
|---|---|---|
| 商品タイプ | 期日一括返済併用型 | 残価設定型 |
| 主な狙い | 毎月返済を抑え、将来の売却・住み替えを見据える | 残価設定月以降の返済軽減・買取選択肢を持つ |
| 一括返済 | 担保評価額50%相当の元金を期日に一括返済 | JTIの買取オプション等により出口を選ぶ |
| 価格保証 | 将来の物件価格は保証しない | JTIの残価保証・買取オプションが前提 |
| 対象 | 高額マンション中心 | 契約住宅メーカー経由の対象住宅 |
| 向く人 | 大都市マンションを一定期間保有し、売却・借換えまで設計できる人 | 老後の返済負担や住み替え時の残債リスクを抑えたい人 |
住信SBIネット銀行は、バルーン返済部分の出口を自分で作る商品です。楽天銀行は、JTIの仕組みを使って将来の選択肢を持つ商品です。どちらも毎月返済を軽くする効果はありますが、リスクの出方は違います。
契約者にとってのメリット
契約者にとって共通するメリットは、毎月返済額を抑えやすいことです。住宅価格が上がり、通常の35年ローンでは返済負担が重いと感じる人にとって、選択肢が増える意味はあります。
- 毎月の返済負担を軽くしやすい。
- 子育て期や収入変動期の家計を調整しやすい。
- 将来の住み替えを前提にした住宅取得を考えやすい。
- 高額物件や長期優良住宅など、資産性を意識した物件選びと相性がある。
- 通常の住宅ローン以外の選択肢として比較できる。
ただし、メリットは「月々の支払いが下がる」だけで判断してはいけません。毎月返済が軽くなる分、元金が残りやすい、利息が長く続く、出口が必要になるという裏側があります。
契約者にとってのデメリット
最大のデメリットは、将来の不確実性を住宅ローンに持ち込むことです。住宅価格、金利、家族構成、勤務先、収入、売却市場は、契約時の想定どおりに進むとは限りません。
- 元金が減りにくく、総利息が増える可能性がある。
- 金利上昇時に、利息負担が重くなる可能性がある。
- 売却や借換えがうまくいかないと、出口が詰まる。
- 対象物件や対象住宅メーカーが限られ、選択肢が狭い。
- 通常ローンより仕組みが複雑で、契約内容を理解しにくい。
- 「月々安いから買える」と考えると、過大な借入につながりやすい。
変動金利を選ぶ場合は、金利上昇リスクも重要です。返済額が抑えられていても、元金が残りやすいローンで金利が上がると、利息負担の影響が大きくなります。変動金利と固定金利の考え方は、住宅ローンの変動金利と固定金利の選び方も確認してください。
向いている人・向かない人
これらのローンが向いているのは、将来の出口を具体的に考えられる人です。たとえば、10年から15年後に住み替える可能性が高い、資産価値の高い立地を選ぶ、売却時の残債リスクを複数パターンで試算できる、といった人です。
| 向いている人 | 向かない人 |
|---|---|
| 将来の住み替え・売却を前提に考えている | 一生住み続ける前提で、売却を考えたくない |
| 資産価値が落ちにくい物件を慎重に選べる | 月々の返済額だけで物件価格を決めたい |
| 金利上昇・価格下落・収入減少を試算できる | 複雑な契約条件を確認するのが苦手 |
| 家計に余裕があり、出口資金も準備できる | 通常ローンでは審査や返済が厳しいため無理に使いたい |
月々の返済額が下がると、買える物件価格が上がったように見えます。しかし、借金が消えるわけではありません。残価設定型・バルーン型は、住宅を「持つ」だけでなく、将来「どう手放すか」「どう返すか」までセットで考えるローンです。
契約前のチェックリスト
検討するなら、次の点を必ず確認しましょう。
- 通常の35年ローンと比べて、毎月返済額・総返済額・残債がどう変わるか。
- 金利が1%、2%上がった場合でも返済できるか。
- 10年後・15年後に売却した場合、残債を上回る価格で売れる想定か。
- 売却できなかった場合、借換えや自己資金で一括返済できるか。
- 対象住宅・対象エリア・住宅メーカー・申込経路の制限を満たすか。
- オプション行使時の条件、費用、手続き、家族の同意を確認したか。
- 住宅ローン控除、団信、火災保険、修繕費、管理費・修繕積立金も含めて試算したか。
特にマンションでは、住宅ローン返済とは別に管理費・修繕積立金・固定資産税がかかります。高額マンションほど、将来の修繕積立金上昇や売却時の流動性も確認が必要です。
まとめ:月々の安さより「出口」を見るローン
住信SBIネット銀行の期日一括返済併用型住宅ローンと、楽天銀行の残価設定型住宅ローンは、どちらも住宅価格高騰時代の新しい選択肢です。毎月の返済負担を抑えやすく、将来の住み替えやライフステージの変化を見据えた借り方ができる点はメリットです。
ただし、通常の住宅ローンよりも出口設計が重要です。住信SBIネット銀行は、将来の物件価格を保証せず、期日までに全額返済が必要です。楽天銀行はJTIのオプションがある一方、対象住宅や申込経路が限られ、住宅を手放す選択も含まれます。
「月々の返済が安いから大丈夫」ではなく、「売却できない場合でも返せるか」「金利が上がっても耐えられるか」「家を手放す選択を家族で受け入れられるか」まで確認してから検討しましょう。
参考にした公式情報
- 住信SBIネット銀行「期日一括返済併用型住宅ローン」プレスリリース
- 楽天銀行「残価設定型住宅ローン」
- 楽天銀行「金利選択型の残価設定型住宅ローンの取扱いを開始」
- 住宅金融支援機構「特定残価設定ローン保険」
- 国土交通省「固定金利型住宅ローンの利用円滑化等の取組内容」
