特殊詐欺の被害金追跡・凍結の新枠組みとは?大手9行と警察庁の連携を解説

特殊詐欺で銀行口座へ振り込んでしまったお金は、振込先口座に長く残るとは限りません。犯罪グループにより、すぐに別の口座へ移されることがあります。そのため、被害に気づいた直後の行動が非常に重要です。
金融庁と警察庁の公表によると、大手銀行等9行と警察庁の間で、特殊詐欺に係る被害金の追跡、凍結、回復に向けた官民協働型枠組みが始まります。運用開始は2026年6月1日です。
この記事の結論
- 特殊詐欺で振り込んだら、まず銀行と警察へ即連絡する。
- 新枠組みは、警察から参加銀行への照会をオンライン化し、追跡・凍結を早める狙いがある。
- 回復が保証される制度ではないため、振込明細、相手情報、やり取りの保存が重要。
- 被害金が別口座へ移る前に動けるかが、回復可能性を左右する。
新しい官民協働型枠組みとは
警察庁の広報資料では、特殊詐欺の被害金は、被害者が振込を行った口座に留まらず、犯罪グループにより速やかに別の口座へ移転されている実態があると説明されています。
従来は、警察が金融機関に文書を郵送するなどして照会している間に、被害金が別の口座へ移ってしまうことが課題でした。新しい枠組みでは、警察庁を介してオンラインで照会し、協定締結金融機関が迅速に回答することで、被害金の追跡、凍結、回復を図るとされています。
参加する9つの金融機関
警察庁資料では、参加金融機関として次の9行が挙げられています。
- みずほ銀行
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- りそな銀行
- セブン銀行
- 楽天銀行
- イオン銀行
- SBI新生銀行
- ゆうちょ銀行
参加銀行に振り込んだ場合だけでなく、被害金が参加銀行の口座を経由する場合にも、迅速な照会・凍結が重要になります。ただし、すべての銀行、すべての被害金が必ず回復できるという意味ではありません。
被害に気づいたら何をするか
重要なのは、迷っている時間を短くすることです。相手に連絡を取り続けるより、銀行と警察に相談し、振込先口座の凍結につながる行動を優先してください。
| 段階 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 被害発覚 | すぐに銀行と警察へ連絡する | 時間が経つほど被害金が別口座へ移る可能性が高い |
| 振込先口座の確認 | 振込明細、相手口座、日時、金額、やり取りを保存する | 照会や凍結依頼に必要になる |
| 警察から銀行への照会 | 枠組み参加銀行には警察庁を介してオンライン照会 | 従来より迅速な追跡が期待される |
| 凍結・回復手続き | 移転先口座を管理する金融機関へ早期に照会・凍結依頼 | 回復が保証されるわけではないが、初動が重要 |
被害回復に関係する制度を混同しない
今回の枠組みは、被害金を追跡し、凍結につなげるスピードを上げるための仕組みです。一方で、凍結された口座に残った資金を被害者へ分配する手続きや、民事上の返金請求とは役割が違います。
| 制度・相談先 | 役割 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 今回の官民協働型枠組み | 警察庁と参加金融機関の照会・回答を速める仕組み | 被害金の追跡、移転先口座の凍結、捜査開始を早めること |
| 振り込め詐欺救済法の手続き | 犯罪利用預金口座に残った資金を被害者へ分配する手続き | 凍結された口座に残高がある場合の被害回復 |
| 弁護士・相談機関への相談 | 損害賠償、返金交渉、証拠整理、二次被害防止の相談 | 法的な見通しと費用対効果の確認 |
| 消費生活センター・警察相談 | 詐欺被害の相談、事業者情報、注意喚起の確認 | 相手と連絡を続ける前に公的窓口へ相談すること |
つまり、警察や銀行に連絡しただけで自動的に全額戻るわけではありません。どの口座にいくら残っているか、他の被害者がいるか、口座名義人の権利関係がどうなるかで、実際の回復額や手続きは変わります。
保存しておきたい証拠
被害に気づいたら、次の情報を消さずに保存してください。相手をブロックする前に、やり取りのスクリーンショット、URL、アカウント名、送金指示、振込明細を残すことが大切です。
- 振込先の金融機関名、支店名、口座番号、名義。
- 振込日時、金額、振込明細。
- LINE、SNS、メール、SMS、電話番号、URL。
- 投資アプリや副業サイトの画面。
- 相手から送られた本人確認書類や契約書らしき画像。
お金が戻るとは限らない点に注意
新しい枠組みは、被害金の追跡や凍結を早めるための仕組みです。被害金がすでに引き出されている、複数口座を経由している、海外送金や暗号資産に移っている場合などは、回復が難しくなることがあります。
また、被害回復の手続きには、金融機関の凍結、口座名義人の権利関係、被害者間の分配などが関わります。焦って「被害金を取り戻す」と名乗る別の業者に依頼すると、二次被害に遭う可能性もあります。
二次被害を避ける
詐欺被害後は、「弁護士を紹介する」「調査費を払えば回収できる」「暗号資産を追跡できる」などの誘いが来ることがあります。正式な相談先かどうか、費用体系が明確か、回収保証をうたっていないかを確認してください。
まずは、振込先の銀行、警察、消費生活センター、法テラス、弁護士会など、公的・準公的な窓口を優先します。SNS上の匿名アカウントに、さらに個人情報や費用を渡さないようにしましょう。
まとめ
特殊詐欺の被害金は、短時間で別口座へ移されることがあります。2026年6月1日から始まる官民協働型枠組みは、この追跡・凍結・回復を早めるための仕組みです。
ただし、制度があるから安心というわけではありません。被害に気づいたら、銀行と警察へすぐ連絡し、振込明細や相手とのやり取りを保存してください。回復可能性を高めるには、初動を早くすることが何より重要です。























