投資信託

投資成果を判断する「トータルリターン(投資収益率)」

return株式投資や投資信託において「トータルリターン」という考え方が特に長期投資において重要と言われています。これは投資元本に対して、元本の増減に加えて、これまで受け取った配当金や収益分配金を加味して計算するというものです。長期投資家なら確実に押さえておきたいこの「トータルリターン(投資収益率)」という考え方や活用方法についてまとめます。

トータルリターン(投資収益率)の計算方法

トータルリターン(投資収益率)はROIとも呼ばれ、投下資本に対する総利益を示す指標となります。計算方法はとても簡単です。

トータルリターンの計算方法
投資収益率=(総利益÷投下資本)×100

総利益は、まだ売却していない場合は「含み損益」+「過去に受け取った配当・分配金」となります。
基本的に、トータルリターン(投資収益率)は保有期間全体のリターンを示すことになります。たとえば、10年間保有していた場合、10年間の総損益の利回りということになります。

これを1年当たりに直す場合には、ちょっと計算が変わってきます。
単利に換算する場合は、トータルリターンの率を運用年数で割るだけでOKです。たとえば、10年間のトータルリターンが50%という場合は年率5%ということになりますね。

一方で複利に換算する場合は、「(r)10=1.5」となり、利回りは約4.14%ということになります。
複利計算については「複利の力を活用(資産運用と複利効果)」などもご参照ください。

 

株式投資とトータルリターン

株式投資において特に高配当銘柄などに投資をする場合はこのトータルリターンは重要です。特に高配当でかつ増配(配当額を増額すること)が多い企業などの場合は、株価自体も堅調に推移することが多いですが、配当金も加えたトータルリターン(ROI)はより高くなります。

2014年からスタートするNISA(日本版ISA)などをきっかけに株を始めるという人も多いかと思いますが、頻繁な売買に向かないNISA口座で株を売買するというのであれば、基本的に長期投資がお勧めです。
株の長期投資を考える場合はこうしたトータルリターンを重視して銘柄を選定するようにしましょう。

 

投資信託とトータルリターン

投資信託については平成26年(2014年)12月より、「トータルリターン通知制度」がスタートします。
これは、今までは投資信託の損益については、取得価額(取得した価格)と基準価額(現在の時価)しか表示されてきませんでした。

しかしながら取得価額は特別分配金(元本の払い戻し)が行われるとその分が差し引かれることになり、一体自分がどの程度の損益があるのかを判断しづらい状態でした。

例を挙げてみます。
取得価額8000円の投信。1年間に500円の分配金を出す。しかしながら、1年後の基準価額は7600円になっていたとします。

この投資信託の分配金だけに注目すると、利回りはなんと6.25%という超高配当に見えます。しかしながら、基準価額は下落しており400円の含み損が発生しています。

この流れだと税法上500円の分配金のうち400円は元本の払い戻しとみなされる「特別分配金」となります。そのため、1年後のあなたの投資信託口座は「取得価額:7600円 / 基準価額:7600円 (含み損0円)
と表示されます。ということは、損はしていないし、500円の配当は受け取った。とおもいますが、実際には500円のうち400円は元本の払い戻しで正味の分配金は100円にすぎません。

じゃあ、損益はいくらなの?という計算が非常に厄介ですし分かりにくいです。
これがトータルリターンになると下記のようになります。

(総利益100円)÷(取得価額8000円-払い戻し400円)=100÷7600=1.31%
の投資信託の1年あたりのトータルリターンは1.31%ということですね。表面上の利回りである6.25%と比較すると大きく違いがあることが一目でわかります。

最近売れている、毎月分配型投資信託の多くはこのような特別分配金(元本の払い戻し)をたくさん行っています。その上で見た目だけは高い収益性を謳っており、まさに投資家の誤解を生んでいると言えるでしょう。
そのような側面からトータルリターンの表示義務化がとり立たされて実現しようとしています。

投資信託を評価するときは必ずトータルリターンで考えるようにしましょう。

ちなみに、投資信託の特別分配金については「投資信託の分配金と税金」のページで詳しく例示されて説明されているのでそちらもご参照ください。

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高山一郎
高山一郎です。株や投資に関する情報発信を始めて10年以上、投資歴は15年以上です。実際の経験に基づく役立つ投資やお金に関する情報を発信していきます。