NISA(小額投資非課税制度)は、年間の投資金額120万円までの範囲であればその投資から得られる利益が非課税となる制度です。2014年にスタートした制度で、導入時は10年かんの期限付きとなっていました。
金融業界は制度の「恒久化」について要望をしていましたが、2019年10月16日に政府はNISAの恒久化は富裕層優遇との指摘があるとして、恒久化を見送る方針としたようです。
てっきり恒久化されるものと思っていましたが、驚きです。しかも理由が富裕層優遇とは……。
NISAとは?
NISAは小額投資非課税制度(Nippon Individual Savings Account)の略称です。イギリスのISAを手本に日本版ISAとしてスタートした制度です。
年間120万円までの投資による利益(売却益・配当金・分配金)を5年間非課税とする制度です。最大で120万円×5年間=600万円までの投資による利益が非課税とすることができます。
資産形成を助けるための制度として導入されました。なお、導入前までは証券税制は10%の軽減税率(現在は20%)となっており、その軽減税率を廃止するバーター的な意味合いもありました。
そんなNISAは2014年~2023年までの時限的な制度として導入されました。導入後も金融庁や金融界(銀行・証券など)は制度の恒久化を政府に求めてきた経緯があります。
NISAの恒久化ならず。終了するとなるとどうなる?
現状のまま延長や恒久化が行われないとなると、NISA、ジュニアNISA,つみたてNISAなどの小額投資非課税制度は以下のようになります。
NISAは2023年で終了予定
まずは、通常のNISAです。他のNISAとの区別があるので、以降は「一般NISA」と呼ぶようにします。こちらは年間120万円までを5年間非課税運用することができます。制度が終了となるとその時点で非課税期間は終了となります。
2023年までは120万円までの投資は可能で2023年に投資をした資金は2027年までは非課税で運用できます。
- 2019年分の投資→2023年12月末まで非課税運用
- 2020年分の投資→2024年12月末まで非課税運用
- 2021年分の投資→2025年12月末まで非課税運用
- 2022年分の投資→2026年12月末まで非課税運用
- 2023年分の投資→2027年12月末まで非課税運用
ただし、2019年以降の一般NISAで投資をした分は5年の非課税期間満了時(2024年)にはNISAの新規枠がなくなっているので、ロールオーバーができなくなります。
つまり、2019年以降の一般NISAで投資をした分は5年後の満期時点で含み損が出ている場合は、その時点で事実上、強制的に損失が確定させられることになります(課税口座に移管され、取得価格は含み損が無視されるため)。
ジュニアNISAも2023年で終了
18歳未満の未成年が利用できるジュニアNISAも2023年で制度が終了となります。
こちらも一般NISAと同様に、2023年までは年間80万円までの範囲で投資をすることができ、子ども(ジュニアNISA口座開設者)が20歳になるまでの間は制度終了後も非課税で運用できます。
つみたてNISAは2037年に終了予定
つみたてNISAは一般NISAより遅れて、2018年にサービスが開始されました。年間の投資額は40万円までと小さいものの、非課税期間は一般NISAの4倍の20年となっています。
投資可能期間は2018年~2037年となっているので、制度の終了はまだまだ先です。2037年までは毎年40万円の投資ができます。
つみたてNISAについては終了までの期限がまだまだ長いので、議論されるのはしばらく先になりそうですが、現在の状況だと、一般NISA、ジュニアNISAは2023年+αで終了となって、つみたてNISAだけになりそうですね。
なぜ、NISAが富裕層優遇なのか?
個人的には今回のNISAが富裕層優遇という政府判断は間違っていると思います。
そもそも、NISA(小額投資非課税制度)は資産を持たざる者が資産形成を少しでも有利に進めるための制度です。働いて稼いだお金を
年間120万円を貯蓄する人が果たして“富裕層”なのでしょうか?
年収500万円、600万円といったいわゆる平均的な収入の人でも年100万円くらいを貯蓄することは十分に可能だと思います。
もっと別の理由ならともかく、富裕層優遇にあたるから恒久化しないなんて話は、結論ありきにしか聞こえません。
この国って本当に庶民が富裕層(資産家層)になろうとするのを極端に邪魔しようとするなぁと思います。
それを言うなら菅官房長官の肝いりで、枠を2倍に拡大させた“ふるさと納税”の方がよっぽど富裕層の節税に使われているんじゃないかなぁと思うわけであります。