信用取引、先物取引、FX取引といった証拠金取引の場合、自分が預けている金額以上の取引ができます。

たとえば、株の信用取引なら委託保証金の最大約3.3倍、FX取引なら最大25倍の金額の売買ができるようになっています。こうしたレバレッジ取引において、一定の損失(含み損)が発生して証拠金が所定の比率を下回ったときに発生するのが「追加保証金」、通称「追証(おいしょう)」です。

今回は追証の仕組みと、もし追証を支払えなかったらどうなるのか、その具体的なリスクと回避策をまとめていきます。

追証とは何か?

追証(おいしょう)とは「追加保証金(または追加証拠金)」の略称です。

信用取引、先物取引、FXといった証拠金取引においては、最低維持証拠金(維持率)というものが定められています。たとえば、多くのネット証券(楽天証券、SBI証券、マネックス証券、松井証券など)では、株の信用取引における最低維持率は20%とされています。

ただし、この基準は証券会社によって異なります。たとえば、SMBC日興証券では追証警告ラインが25%、強制決済ラインが20%と二段階になっていたり、野村証券のように33%を下回ると即追証となる会社もあります。

100万円(株価1,000円×1,000株)の信用取引ポジションを維持する場合:
最低維持率20%の証券会社では、20万円の証拠金が最低でも必要となります。

維持率の計算式:
(預けている証拠金 - 含み損)÷ 建て玉の総額 = 維持率

この維持率を下回ってしまった場合は、最低維持率を回復させるための資金を証券会社等に追加で預け入れる必要があります。これが追証の正体です。

各取引における追証の詳細は、下記の参考サイトも併せてご確認ください。

追証が発生する具体的な仕組み

追証が発生するのは、主に「建て玉に含み損が発生すること」で起こります。

先ほどの例で、100万円の信用建て玉に対し、20万円の証拠金を預けているケースを考えます。ここで株価が5%下落し、5万円の含み損が発生したとします。

計算式に当てはめると、(20万円 - 5万円)÷ 100万円 = 15% となり、最低維持率の20%を割り込みます。この瞬間に追証が発生し、不足分を解消しなければならなくなります。

FXにおける追証の注意点

FX(外国為替証拠金取引)の場合、株の信用取引とは基準が異なるケースが多いです。多くのFX会社では「証拠金維持率が100%を下回った時点」で追証が発生し、翌営業日などの指定期限までに解消できない場合はロスカット(強制決済)となります。レバレッジが最大25倍と高いため、わずかな為替変動でも追証が発生しやすい点に注意が必要です。

追証が発生した時の対処法

維持率が規定のライン(例:20%以上)に回復するように、以下のいずれかの対応をとる必要があります。

1)追加の入金(追い金)

現在の証拠金が「20万円 - 5万円(含み損)」で15万円になっている場合、最低維持ラインの20万円に戻すために5万円を追加入金します。これにより、ポジションを維持したまま取引を継続できます。

2)建玉を整理して維持率を回復させる

追加資金がない場合は、持っているポジションの一部を決済(売却)して、取引総額を減らす方法があります。

たとえば、1,000株のうち500株を売却すると、建玉は50万円に減ります。この際、2.5万円の損失が確定し、残りの500株に2.5万円の含み損が残ります。

この時の証拠金は「20万円 - 2.5万円(確定損) - 2.5万円(含み損) = 15万円」となります。
建玉が50万円に対して証拠金が15万円なので、維持率は30%まで回復し、追証状態は解消されます。

追証が発生するタイミングはいつ?

追証は計算上の「締め」が行われるタイミングで判定されます。取引時間中に一時的に維持率を下回っても、その後の値動きで回復すれば問題ない場合もありますが、締めの時点で下回っていると支払義務が生じます。

株の信用取引の場合、一般的に「大引け(15時)」後の清算タイミングで判定されます。

追証が払えないとどうなる?(未払い時のフロー)

期限までに追証を解消できなかった場合、非常に厳しいペナルティが待っています。

1. 証券会社による強制決済(反対売買)

期限を過ぎると、証券会社の権限によってすべての建玉が強制的に決済されます。自分の意志とは無関係に損失が確定してしまいます。なお、かつては強制決済時に割高な手数料が課されることもありましたが、現在は通常の手数料体系で行うネット証券が増えています。とはいえ、不利な価格で成行決済されるリスクは避けられません。

2. 遅延損害金の発生と口座凍結

強制決済を行っても証拠金がマイナス(不足分が発生)し、その支払いが遅れた場合は、年利10%〜14%程度の遅延損害金が発生します。また、当然ながら証券口座は凍結され、追加の取引や出金はできなくなります。

3. 信用情報機関(ブラックリスト)への掲載

不足金の支払いが2ヶ月以上延滞した場合、信用情報機関に事故情報が登録される、いわゆる「ブラックリスト」入りの状態になります。こうなると、クレジットカードの作成や住宅ローンの審査に通らなくなるなど、日常生活に重大な支障をきたします。

4. 財産の差し押さえ

督促を無視し続けた場合、証券会社は法的な手続き(民事訴訟など)に踏み切ります。最終的には給与や預貯金などの財産差し押さえが行われる可能性があります。

強制決済でも借金が残ってしまったら?

レバレッジを高く設定していると、相場の急変時に強制決済が間に合わず、預けている証拠金以上の損失(不足金)が出るケースがあります。これは証券会社に対する「借金」となります。

基本的には一括返済を求められますが、どうしても不可能な場合は誠実に話し合いを行い、返済計画を立てる必要があります。督促を放置することだけは絶対に避けてください。

「自己破産ができない」は誤解?

よく「投資で作った借金は自己破産できない」と言われますが、これは正確ではありません。

確かに、FXや信用取引による借金は破産法上の「免責不許可事由」に該当するため、原則として免責(借金の帳消し)は認められません。しかし、実際には「裁量免責」という制度があり、裁判所の判断によって免責が認められるケースも多くあります。

もし多額の不足金を背負ってしまった場合は、一人で悩まずに弁護士や司法書士などの専門家へ早急に相談することを強く推奨します。

追証を発生させないためのリスク管理

追証は投資家にとって最大の敵の一つです。発生を防ぐためには、以下の管理を徹底しましょう。

  • 余裕を持った維持率の維持:最低維持率ギリギリではなく、50%〜100%以上の高い維持率をキープする。
  • 逆指値注文(ロスカット)の活用:あらかじめ許容できる損失額で自動決済されるよう設定しておく。
  • レバレッジを抑える:自分の許容できるリスクの範囲内で、過度なレバレッジをかけない。

https://money-magazine.org/%e6%a0%aa%e3%82%84%e5%85%88%e7%89%a9%e5%8f%96%e5%bc%95%e3%80%81fx%e3%81%aa%e3%81%a9%e3%81%a7%e5%80%9f%e9%87%91%e3%82%92%e8%83%8c%e8%b2%a0%e3%81%a3%e3%81%9f%e6%99%82%e3%81%af%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%9/

以上、信用取引、先物、FXなどで追証が払えなかったらどうなるか、その仕組みとリスクについてまとめました。証拠金取引を行う際は、常に最悪の事態を想定したポジション管理を心がけましょう。

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高山一郎
高山一郎です。株や投資に関する情報発信を始めて10年以上、投資歴は15年以上です。実際の経験に基づく役立つ投資やお金に関する情報を発信していきます。