日本版ISAは証券投資に対する優遇税制が終了すると同時に行われる税の優遇措置です。1年あたり100万円(2016年以降は120万円)までの投資非課税枠を作り、そこから得られる配当金や売却益について最長5年間非課税となるシステムです。
1年あたり120万円で5年分利用可能となるので最大で600万円までの非課税枠を得ることが出来るわけです。今回はこの、2014年1月から導入されている日本版ISA(NISA)の制度やシステム、活用方法などについてまとめます。
NISAのしくみと投資の利用方法
NISAを利用するためには証券会社(または銀行)にNISA口座という口座を通常の口座とは別に開設する必要があります。
この口座は一人につき1口座だけ作ることが出来ます。
複数の証券会社で株式投資などをしている場合でも、どこか1社に絞る必要があるわけです。NISA口座の変更は2014年時点では4年間変更できませんでしたが、2015年以降、1年ごとに変更ができるようになりました。
NISA口座を開設すると、NISA口座と通常の口座(特定口座など)は別物として扱われます。
NISA口座内で買い付けしたものだけが非課税となります。
そのため、投資の注文をする場合には、「NISA口座」なのか「特定口座」なのかを選択する必要があります。
NISA口座の基本情報のまとめ
- 利用できるのは20歳以上(2016年以降は未成年向きのジュニアNISAが開始)
- 非課税枠は年120万円(2015年以前は年100万円)
- 非課税期間は5年間
- 対象商品は「株」と「株式投資信託」(2016年以降は債券と公社債投信も可能)
- 制度は2023年までの期限付き制度(恒久化も検討中)
NISA口座開設の注意点
- NISA口座は一人一口座。複数の証券会社には作れない
- NISA口座で売買できる投資商品は証券会社(銀行)によって異なる
- NISA口座でもし「損失」が発生した場合であっても「特定口座等」の課税口座との間で損益通算は不可
参考:NISA口座では「損をしない投資」を最重要と考えるべき
- 配当金の受け取り方法は「株式比例配分方式」を選択すること。
- いわゆる貸株サービスの利用はできない
(2)で挙げた投資商品については証券会社によって取り扱い可能な商品が異なりますので、自分が投資したい商品があるかどうかもどこにNISA口座を作るかのポイントとなるかと思います。おすすめはこのページの下の方で説明していますが、やはりネット証券です。
取り扱い商品数が多いので選択に幅が持てます。
最もお勧めできないのは銀行です。銀行でもNISA口座を積極的に募集していますが投資可能な商品が投資信託(しかも手数料が高い!)くらいしかありません。
この辺りについては「投資信託を銀行窓口で買ってはいけない」も読んでみてください。
また、最後の4番目も重要です。株式の配当金の受け取り方法は大きく「株式比例配分方式」「配当金領収証方式」「登録配当金受領口座方式」の3つがありますが、NISA口座で配当金が非課税になるのは最初の「株式比例配分方式」だけです。
(参考:株の配当金を受け取る3つの方法)
なんと、2014年のNISA口座では、およそ3割の人が株式比例配分方式ではない方法を選択し課税されているという報告もあります!もし、株式比例配分方式ではない方法を選択していた場合はこちらに変更しましょう。ネット証券の場合はネット上から手続き可能です。
NISA(ニーサ)における非課税枠のしくみ
- 非課税枠は1年あたり100万円。5年で500万円まで
- 非課税枠は使い切り方式。翌年へ繰り越しは不可
- 新規投資商品のみが対象。現在保有している株などをISA口座に移すことはできない
- 非課税枠で買った商品は5年間非課税。途中で売却した場合でも非課税枠は戻らない
- 今のところ10年間の時限制度の予定。
大切なところは、非課税枠は新規投資のみが対象で、1年で120万円までということです。たとえばA株を120万円分買ったとします。すると2016年~2020年まではA株から得られる配当金は非課税です。また期間中にA株を売却した場合の譲渡益に対する税金も非課税となります。
2017年になると新たに120万円分の非課税枠が生じます。これが2021年まで続きます。すべての非課税枠にフルで投資をした場合は累計で600万円分の非課税枠が出ることになります。
NISA口座ではどんな投資がおすすめなの?
基本的には「長期投資」による運用がおすすめです。
短期的な株の売買では120万円程度の非課税枠などすぐに使い切ってしまいます。それよりは、数年間の長期にわたって保有して配当金などのインカムゲインを非課税で受け取り、長期の株価上昇などに期待するという方法がおすすめです。
個別株式よりも、中長期保有が前提となる投資信託などへの投資のほうが魅力的といえそうでしょうか。
また、NISA口座において売買で「損失」が発生した場合、その損失は損益通算が出来ない仕組みになっているので、短期売買で利益をあげるというスタイルにはますます向きません。
NISAに関するQ&Aまとめ
以下はNISAに関してよくある疑問や質問をまとめたものです。
5年以上保有したとき、株や投資信託はどうなる?
特定口座等の課税口座に移すと言う方法と、時価評価が120万円まであれば翌年に生じる非課税枠にロールオーバー(移し変え)することも可能です。たとえば2016年に買った株は2021年に非課税が切れますが、2021年に生まれる120万円の非課税枠に移すことができます。
課税口座に移した場合、税務上の取得は課税口座に移された時点の価格となります。たとえば、2016年に120万円で買った株が2021年に150万円に上昇していた場合、取得価格は購入した時点の120万円ではなく、150万円で評価されます。
一方で120万円で買った株が80万円に下落していた場合は、取得価格も80万円で評価されてしまうのでご注意ください。
money-magazine.org/nisa-rollover/
A証券会社からB証券会社にNISA口座を移したい(変更したい)
2015年以降にISA口座を変更することが可能となる予定です。ただし、変更できるのは次の年度の非課税枠が変更できるだけです。2014年にA証券で作った100万円分の非課税枠は引き続きA証券で管理され、2019年まではA証券において管理されることになります。B証券で管理されるのは2015年の非課税枠からとなります。
NISA口座は家族口座も開設できるか?
可能です。NISA口座開設年の1月1日で20歳以上の方ならNISA口座を開設できます。たとえば、夫婦でNISA口座を持てば、年間240万円分の投資が非課税となるわけです。ただし、借名口座(借名取引)とならないように注意してください。
(参考:やっていはいけない株取引のまとめ#借名口座)
なお、未成年者に関しては「ジュニアNISA」という未成年向けの制度が2016年よりスタートしております。
NISA口座で売買できる投資商品は何か?
制度上は「上場株式」「株式投資信託」となっています。投資信託にはETFやREIT(不動産投資信託)、海外ETFなどが含まれます。
NISA口座で売買できる金融商品については証券会社によって異なるのでご注意ください。たとえば、銀行でもNISA口座は作ることができますが、そもそも株の取り扱いがないので株式の売買はできません。
1年間で非課税枠を使い残した場合はどうなりますか?
消失します。たとえば、2016年にNISA口座内で90万円分の株を購入した場合、残りの30万円分の非課税枠は消えます。次年度以降に繰り越すことは出来ません。
また、売却した枠は戻りません。たとえば、2016年にNISA口座で90万円の株を買い、同年中に40万円売却したとします。この場合、当年中の非課税枠は30万円のまま変化しません。
再投資型の投資信託を買った時の「再投資分」はどうなりますか?
ある年に120万円分の株式投資信託を買って、その年に5万円の分配金がでて再投資されたとします。分配金の5万円は非課税対象となりますが、再投資された5万円分は非課税の対象となりません。
一方で無分配型の投資信託なら時価(基準価額)が上昇しても課税対象となりませんので、分配金再投資型と比較するとNISA口座では有利になります。
NISAで投資した株式を貸株することはできますか?
貸し株サービスとは、証券会社に保有する株式を「貸与」してその代わりに貸し株料を受け取るというものです(参考:ネット証券の貸株サービスのメリットとリスク)。
NISA口座はその法的性質上、株式を貸し出すことが認められておりません。そのため、NISA口座で預けている株式を貸株することはできません。
NISA口座におすすめの証券会社
NISA口座を開設するときの証券会社選びは慎重に行う必要があります。なぜなら後からの変更が大変困難だからです。また、各証券会社によってNISA口座内で売買できる投資商品に違いが出てくるようです。
そのため、基本的には取り扱い商品のラインナップが広く、手数料も安い大手ネット証券がおすすめです。参考:NISA口座で証券会社比較
1.SBI証券 (公式ホームページはこちら)
投資信託の取り扱い本数はネット証券でも最多水準。また、海外ETFについてもNISA口座対応を表明しています。投資信託の保有に応じてマイレージ(ポイント)がたまりキャッシュバックを受けられるサービスがあるなどは魅力。
>>SBI証券の詳細情報
2.マネックス証券 (公式ホームページはこちら)
外国株の取り扱い数が豊富かつネット証券の中でも手数料が安いです。米国株や海外ETFなど外国の株などに投資をしたいならお勧めです。
>>マネックス証券の詳細情報
3楽天証券 (公式ホームページはこちら)
SBI証券と同様の商品ラインナップとなっています。ただ、こちらの場合、投資信託保有に関するポイントなどは用意されていないので、投資信託を買うつもりなら上記のSBI証券の方がおすすめ。
>>楽天証券の詳細情報
以上、NISA(ニーサ・小額投資非課税制度)に関するまとめでした。