不動産投資

REIT投資に役立つ株価指標

REIT(不動産投資信託)に投資をする場合に役立つ株価指標(REITの価格は投資口価格というので本当は投資口価格指標というのでしょうが、ここでは株価指標と統一します)をまとめます。株価に関する株価指標にはPERやPBRなどがありますが、REITに関する株価指標についてはあまり知られていないようです。

今回は代表的なNAV倍率とFFO倍率という二つのREIT株価指標についてまとめていきたいと思います。

REITの株価的な割高・割安を分析する

実は、REIT投資の方が企業に投資をする株式投資に対する株価分析は有効です。
企業に投資をする株式投資は収益の源泉は多様です。とある企業があり、その企業がたくさん儲かっているとしてもその利益の源は「技術」によるものなのか、「人的資本(働く人の質)」によるものなのか、あるいは「効率的な生産能力(工場)」によるものなのかが分かりません。
仮にPBRで株価分析をしようと思っても、その会社の利益の源泉が「人的資本(働く人の質)」によるものであれば、PBRという株価分析はほとんど意味を持たないことが分かるかと思います。

また、PERで株価分析をする場合もそれぞれの企業では成長スピードが違います。すでに成熟産業の企業と成長産業の企業のPERを比較すると当然後者が高くなります。

一方で、REIT(不動産投資信託)の場合はシンプルです。REITは企業のように人の影響がごくわずかであり、収益の源泉も「不動産から得られる賃料収入」とみることができます。
また、収益性についても同じ不動産に対する投資ですので、多少の差異はあるにしてもREIT間でそこまで大きな収益性の差が生じることはありません。

そのため、REITは保有する不動産の質や収益力などで現在の株価(投資口価格)が割高なのか、割安なのかを判断しやすいといえます。

 

NAV倍率とFFO倍率

聞きなれない言葉かもしれませんが、NAV倍率は株でいう「PBR」、FFO倍率は株でいう「PER」と類似する指標になります。それぞれを見ていきましょう。

 

NAV倍率

NAV倍率は株におけるPBRです。
NAV=Net Asset Valueの略でREITが保有する不動産の時価価格から、現在のREIT価格がその何倍になっているかをしめすものです。
NAVは現在のREITの純資産(資産-負債)を意味しています。ちなみにいずれも時価換算して数値化します。

REITの投資口価格を1口あたりのNAVで割ることで求められるのがNAV倍率です。

NAV=REITの資産-REITの負債
NAV倍率=投資口価格÷1口あたりNAV

と、シンプルな指標ですね。

 

NAV倍率が1倍割れは素直に買い?

NAV倍率が1倍を割っているということは、現在のREITの純資産よりも市場評価が安いということになります。ということは、REITを買い占めて解体して物件をすべて売却した方が高くなるという計算になります。
そのため、NAV倍率1倍割れは素直に買いという判断で良いと思っています。

ちなみに、NAV倍率と似た株価指標である「PBR」の場合PBR1倍割れは必ずしも買いではないと以前説明しました。(参考:株価指標「PBR(株価純資産倍率)」の意味と読み取り方

これは、企業が保有する資産が必ずしも売れる資産だけではないということが理由の一つでした。
しかしながら、REITの場合、REITが保有する資産の大半は換金性が非常に高い不動産という資産です。しかも、不動産といっても賃貸用の物件なので工場などと比較して流動性が高い商品です。

そのため、NAV倍率はPBRよりもより信頼できる指標の一つと考えています。

 

FFO倍率

FFO倍率は株価指標「PER」とにている指標です。
FFO=Funds From Operationの略でREITが生み出している賃料収入(賃料キャッシュフロー)を意味しています。FFO倍率は投資口価格(株価)がこの賃料キャッシュフローに対して何倍あるのかを示す指標となります。

FFO=当期純利益+減価償却費+(売却損-売却益)
FFO倍率=投資口価格(株価)÷1口当たりのFFO

以上のように計算されます。FFOの計算において減価償却費を加えているのは、減価償却費という費用は本来発生する費用ではなく建物の価値減少という非現金支出であるためです。また、売却損益を控除しているのはREITの賃料キャッシュフロー以外の損益だからです。
こうすることでFFOは単純にそのREITが生み出している賃料収入というお金の動きだけを示すようになります。

こうやってみると、FFOはREITにおける「収益力の大きさ」と見ることでもきます。

 

FFO倍率は低いほど割安

FFO倍率は計算される数字が小さいほど「割安」と評価されます。つまり、収益性が高いのに、株価(投資口価格)が低くしか市場で評価されていないと見ることができるためです。
PERの場合と同様ですね。

REITの場合、国内の不動産投資であれば、収益力という面ではさほど大きな差はでにくいといえます。リスクの高い商業系のREITとリスクが低めのレジデンス系(住宅系)などによって多少の差があります。(参考:REITの種類と特徴

そのため、類似する物件で構成されているREIT同士を比較する場合などにこのFFO倍率は強い味方になってくれるものと考えられます。

 

以上、REIT投資のPERやPBRに該当するNAV倍率やFFO倍率を紹介しました。REIT投資についてもっと知りたい方は「REIT投資講座」のサイトも役立つかとおもいます。

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高山一郎
高山一郎です。株や投資に関する情報発信を始めて10年以上、投資歴は15年以上です。実際の経験に基づく役立つ投資やお金に関する情報を発信していきます。