フィデューシャリー・デューティー(受任者責任)という言葉が、最近金融機関や金融マンを中心に語られるようになっています。
顧客本位の業務運営と呼ばれ、金融機関は顧客に対して、その顧客の利益に反する行為を行ってはならないという考え方です。フィデューシャリー・デューティー(受任者責任)という言葉自体は2014年に金融庁が扱い話題になりました。
従来の銀行や証券会社、あるいは保険会社にとって顧客との利益相反は避けては通れないところある中で、どのような運営が求められるのでしょうか?
フィデューシャリー・デューティーとその運用
金融庁が2017年3月に出したフィデューシャリー・デューティー運用における、その原則として以下の点を挙げています。
- 顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等
- 顧客の最善の利益の追求
- 利益相反の適切な管理
- 手数料等の明確化
- 重要な情報の分かりやすい提供
- 顧客にふさわしいサービスの提供
- 従業員に対する適切な動機づけの枠組み等
具体的な施策として、
金融商品の販売・開発に携わる金融機関に対しては、顧客(家計)の利益を第一に考えた行動がとられるよう、また、家計や年金等の機関投資家の資産運用・管理を受託する金融機関に対しては、利益相反の適切な管理や運用高度化等を通じ真に顧客・受益者の利益にかなう業務運営がなされるよう、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図ることとし、これにより、国民の安定的な資産形成への貢献を促す
引用元:日本再興戦略2016
内容はごくごく当たり前のようなものに見えます。
そもそも金融機関と顧客は利益相反するもの?
でも、実際にはそんな運用が現場ではできていないわけです。このブログでもいくつか指摘してきています。
- 似たような投信があっても手数料が高いものを売る
- 必要性も高くないのに株や投資信託を回転売買させる
- 本来は不要な(過剰な)保険であってもドンドン加入させる
- 顧客に合ったではなく、手数料が高いものから順に売る
- 本来の運用方針とは異なる商品を販売される
- 金融機関で自社グループ(関連会社)のファンド等を優先販売
たとえば、こんな感じですね。どんな会社でも顧客と会社の利益相反行為は多少ならずあると思われますが、お金を扱う金融機関がこれでは困ります。
そうな風なことをやりながら、「お金のコンサルタント」などとして信頼性をバックに販売しようとするから厄介です……。
一定の成果・動きは出てきている
もっとも、関連する動きは出てきています。例えば、投資信託においては低コストのインデックスファンドが多数登場しています。
販売者(銀行や証券の窓口)では売上ランキングはいまだに手数料が高いアクティブファンドが中心ではありますが、ネット証券での売上ランキング上位は低コストファンドとなりつつあります。
保険においても販売時の手数料開示などが進みつつあります。
投資家・利用者としてのリテラシーも重要
もっとも、金融機関側がフィデューシャリー・デューティー宣言を行ったとしても、それが現場レベルでどこまで徹底できるかは微妙なところがあります。
やはり彼らも手数料で食っているわけですし、儲かる商品を売るというのは商売の基本でもあるから完全に排除するのは難しいでしょう。
そうなると求められるのは投資家としてのリテラシーです。資産運用をしようというのであれば株式や投資信託の仕組みや選び方などの基本的な仕組みは理解しておくべきでしょう。