FX(為替)取引において「仲値トレード」と呼ばれる投資手法があります。
仲値というのは、銀行が対顧客で外貨の両替などの取引をするときの基準となる為替レートです。毎日営業日(平日)の10時ごろ(9時55分)に決定し、その日の為替取引の基準として使われます。
この仲値は多くの為替取引関係者にとって重要視されているイベントなので様々な思惑が絡みます。その思惑を利用して投資するのが仲値トレードと呼ばれる為替取引です。
仲値とは何か?
冒頭でも紹介しましたが、仲値は当日の銀行が顧客に対して提示する外貨取引の基準レートとなります。
たとえば、外貨預金の場合110円を「仲値」とした場合、111円がTTS(売り価格)、109円がTTB(買い価格)といったようになります。仲値に手数料(為替手数料)を載せているわけですね。
この仲値は平日の朝9時55分に決定します。銀行によって仲値には差がありますが、多くの方が参照値とするのは三菱UFJ銀行が出す仲値です。
仲値はどんな人にとって重要なの?
仲値は銀行で外貨取引をする多くの人にとって重要ですが、“実需”とよばれる実際にドルやユーロなどの外貨を必要とする人たちにとって重要になります。
企業が海外から輸入をする場合、支払いをするためには米ドルなどの外貨を用意する必要があります。つまりドル買い(円売り)の需要が発生します。一方で輸出企業は手に入れたドルを日本円に交換する必要がありますよね。こちらはドル売り(円買い)の需要が生じるわけです。
輸入企業と関係が深い仲値
輸入企業は「ドル買い(円売り)」、輸出企業は「ドル売り(円買い)」をおこなう実需(需要)があるわけですが、仲値とのかかわりが特に深いのは「輸出企業」です。
日本の場合、輸出企業は比較的規模が小さい会社が多いです。そしてそういった会社は為替予約などを行わず、銀行が決めた日々のレートをもとに必要な分だけのドル買い(円売り)を行うことが多いです。
そのため、輸出企業による実需筋の買いが入りやすいタイミングでは為替がドル高(円安)に動きやすい傾向があります。特に、ゴトー日(ゴトウ日)と呼ばれる、5日、10日、15日、20日、25日、30日は、とくにその傾向が強いとされます(後述)
規模の大きい輸出企業は仲値との関係は低い
日本の場合、産業構造的に輸出を行う企業は規模の大きな大企業であることが多いです。輸出企業のように都度、ドルを円に交換する必要性も高くないこと。また、超大口となりますので仲値にとらわれない取引をすることが多いです。
そのため、実は仲値に関する影響度はそこまで高くないです。
仲値トレードってどんな投資方法なの?
仲値についての説明が終わったところで、仲値トレードという投資方法について紹介していきます。
銀行などの為替取引参加者は実需的なドル買い需要が旺盛だと判断すれば、銀行もそれに合わせて外貨(ドル)を確保しておく必要がありますので、ドル買いに動きます(仲値をできるだけ高くする(円安にする)ほうが儲かるという面もあります)。
そのため、実需筋の買いが見込めそうな日は、仲値決定(9時55分)に向けて、ドル買い需要が大きくなります。その結果、為替レートは円安方向に動きやすいとされます。
一方で仲値が決定した後、買い手が急にいなくなるため需給が逆回転してドル安(円高)の方向に動きやすいとされます。
仲値トレードはこれを見越して、「9時前半に先回りしてドルを買い、仲値決定にかけてドルを売る」あるいは「円安のピークをつける仲値決定時間に合わせてドルを売り、その後の下落に合わせて買い戻す」といったトレードの事を指します。
狙い目は週末ゴトー日
仲値トレードの中でも“狙い目”とされるのが週末ゴトー日です。
ゴトー日は前述のように実需勢の買いが入りやすいです。たとえば毎月25日を支払日といったようにする会社は多いですからね。こうしたタイミングは仲値決定に向けて上昇しやすいという傾向が強まります。
もっとも、必ずというわけではありません。
仲値トレードは一種のアノマリー
今回紹介した“仲値トレード”のような取引は、仲値決定時間に向けて円安になりやすいという一種のアノマリーを利用したトレードとなります。
※実需の買いで上昇する前提ならアノマリー(理論・理屈があるわけではないが、よく 当たるとされる経験則)ではないのでしょうが、実際のところその“実需”というのがぼんやりとしているので、アノマリー的といえるでしょう。
このような仲値トレードという投資手法もあるのだということを、知っていただき、自分なりの得意パターンを見つけていくのも一つの手だと思います。