日本円や米ドルといった各国の為替レートは毎日のニュースでも報道されるように、日々変動しています。
各国の通貨の取引レートは相対的なものとなっており、どちらかの価値が上がれば、どちらかの価値が下がることになっています。今回はそんな為替レートというもの、円高や円安というのはどういう意味があるのか?という基本について紹介します。
各国の通貨と取引レート
日本円、米ドル、ユーロ、豪ドル、英ポンド、NZドル、中国人民元といったように各国や地域ではそれぞれで異なる通貨が使われています。
日本国内のみのお買い物であれば、日本円だけあれば十分ですが、アメリカで買い物をするなら米ドルが必要ですし、フランスやドイツならユーロ、イギリスなら英ポンドが必要となりますね。
このとき、異なる通貨の交換レートを決めるのが「為替レート」となります。1ドル110円なら、1ドルは110円と交換されるということを意味します。
ただし、日本をはじめとして多くの通貨は変動相場制を採用しており、各国間の為替の取引レート(為替レート)は変動します。
そもそもなぜ為替レートは変動するのか?変動理由
通貨の取引レートが変動する理由は、欲しい人と売りたい人による需要と供給の関係によるものです。
なぜ買いたい人、売りたい人がいるのかというと、様々な要因が絡みます。基本的に、通貨の取引は実需では貿易等によるものとなります。
たとえばアメリカの車を買いたいと思ったとします。このアメ車は3万ドルといったように、ドル建てで売られています。日本人がこの車を買いたいという場合は、日本円をドルに交換して(円を売ってドルを買って)から買う必要があります。
このような取引をするために通貨を売買する需要が生まれるわけです。こうした通貨の取引がまとまって方向性が出てくると、為替レートは変動します。
- その国の通貨が買う人が多くなる→通貨高
- その国の通貨が売る人が多くなる→通貨安
と、こういう形になります。ただ、実際の為替レートはこうした実需の動きをマーケットが予想して動きます。たとえば日本の景気が良くなりそうなら円が買われるだろうという予測から、市場(マーケット)はそれを見越して円を買うという動きになるわけです。
- 景気動向(景気が良くなる通貨が買われやすい)
- 金利(金利が高い通貨が買われやすい)
- 国際情勢
- 政治情勢・地政学的リスク
- 要人発言
- 投機的要因
こうした様々な要因から、為替レートは変動するわけです。
円高・円安とは?
通貨が買われる、売られるによって為替レートが変動することはわかりましたが、ここで「円高」「円安」という二つの言葉の意味をしっかりと確認しましょう。逆に覚えている方が多いです。
円高は円が買われること
円高というのは、円が他の通貨に対して価値が上昇するという意味です。
- 1ドル100円が1ドル90円になる
- 1ユーロ110円が1ユーロ105円になる
これらの状況が円高です。円の数字が小さくなっているので安くなっていると勘違いし安いのですが、1ドルを買うにこれまで100円必要だったものが90円でよくなるわけなので、円の価値が高まっているということになりますね。
これが円高です。
円安は円が売られること
円安は、円が他の通貨に対して価値が低下するという意味です。
- 1ドル100円が1ドル110円になる
- 1ユーロ110円が1ユーロ115円になる
こうした状況です。1ドル100円で買えたものが1ドルのモノを買うのに110円出さないと買えなくなるわけですから、円の価値は下がっていますよね?これが円安となります。
為替レートは絶対的なものではなく相対的なもの
もうひとつ、為替レートはその国の通貨の価値を絶対評価するものではなく、相対評価するものです。
たとえば、ドル円(米ドルと日本円)の為替レートは、アメリカドルと日本円の価値を相対的に示しているものです。仮に日本の景気が良くなったとしても、アメリカの景気のほうがさらに良くなっていれば、円安ドル高になりやすいです。
よく、為替レートは各国間の綱引きと表現されることがあります。
各国通貨は米ドルを基準としたクロスレートで決められる
世界各国の通貨と相対的に為替レートを決めるのは厄介です。なので、為替レートは最大の取引量を誇る「米ドル」を基準としてクロスレートという方法で決められます。
たとえば、日本円とユーロの為替レートは円とユーロとの間で決めるのではなく、
- 日本円と米ドル
- 米ドルとユーロ
の「米ドル」を基準としてそこから価格を計算するようにしています。
- 1米ドル=100円
- 1米ドル=0.8ユーロ
- 0.8ユーロ=100円
- 0.8ユーロ×1.25=1ユーロ 100円×1.25=125円 よって1ユーロ=125円
一見面倒なように見えますが、取引する通貨数が増えると、その組み合わせは大きくなります。通貨数が20になれば組み合わせは19の2乗の361の取引レートを決めなければならず大変です。また、取引量が少ない通貨同士では適切なレートが計算しづらいです。
そのため、基軸通貨である米ドルを中心としてクロスレートにより為替レートを決めています。
実際に為替はどこで取引されているの?
よくニュースで本日の「東京外国為替市場は~~」と報道されますね。
為替が売買される取引所のようなものがあると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、為替レートは基本的に相対取引といって「当事者同時がレートを決めて取引する」ようになっています。
なので、株式投資における「証券取引所」のようなものは存在しません。
- 東京外国為替市場
- ロンドン外国為替市場
- ニューヨーク外国為替市場
といった言葉が使われますが、実際にはそれぞれの時間帯に為替取引が集中する時間ごとに、上記のように呼ばれているだけです。
為替はほぼ24時間動いている
外国為替市場は、各国で取引されているため、ほぼ24時間変動します。
- ニューヨーク:21時~翌6時
- ウェリントン:5時~13時
- シドニー:7時~15時
- 東京:9時~17時
- シンガポール:10時~18時
- ドバイ:15時~23時
- ロンドン:18時~翌2時
※冬時間をもとに作成、サマータイムがある市場では夏季は時間がずれます。
こんな具合です。土日はお休みなので、その間は動きません。ただし、東京が祝日の場合、東京市場での取引はなくても、シンガポールやシドニーなどが動いていれば為替レートは変動します。
こんな感じで為替レートは眠らずに変動します。
インターバンク市場と対顧客市場
もうひとつ、為替取引について紹介すると、外国為替取引は大きく「インターバンク市場」と「対顧客市場」という2つの取引の場があります。
インターバンク市場
銀行間が為替のやり取りをする市場。一般的にニュース等で参考にされる為替レートはこのインターバンク市場(銀行間市場)での取引レートを指します。
対顧客市場
銀行が企業が個人などと外国為替を取引する市場です。銀行が顧客に対してインターバンク市場での取引状況をもとに、為替レートを決めて取引します。代表的なものは「仲値」がありますね。こちらは10時ごろに発表される銀行が顧客に提示するレートです。