相場用語に「踏み上げ」という言葉があります。
これは信用取引における「空売り残高」が積みあがっているような状況で、空売りをしている投資家が、空売り玉の決済をするために買戻しを行うことで、その買戻しが買い需要として株価を押し上げることを言います。
今回はそんな株用語の「踏み上げ」について事例や特徴などを紹介していきます。
空売りは場合によってはとても恐ろしいことになる
株式投資の相場格言の一つに、「買いは家まで売りは命まで」という物騒な言葉があります。
非常に有名な格言なのでご存知の方も多いかもしれません。株の信用買いの最大損失は「投資額」です。信用取引でレバレッジをかけていたとしても、預けている元本の3倍程度が最大損失となります。
100円の株の最低価格は0円なので最大損失額は1株あたり100円です。仮に1万株を買っていたとしましょう。この時の最大損失は1万株×100円=100万円となります。
一方で空売りの場合は話が変わります。ただし、上限はありませんよね?
仮にその会社が超画期的な開発・発明をして株価が10倍に跳ね上がったとしましょう。この場合、100円の株は1000円になります。この株を空売りしていた場合、1株につき900円の損失を被ることになります。
この株を1万株空売りしているとしたら?1万株×900円=900万円の損失となります。
これが空売りの怖いところで、大きく上昇した場合の損失は天井知らずとなります。これが売りは命までと呼ばれる空売りのリスクの大きさです。
空売りと踏み上げ
信用取引というのは基本的に半年間という決済期限があります。
つまり、信用取引をした建玉(ポジション)は半年以内に決済をする必要があります。決済は一般的に反対売買をして行われます。
- 信用買い→返済売り注文を出す
- 信用売り→返済買い注文を出す
というわけですね。この返済注文は現在のポジションとは反対の取引をする必要があるわけです。
売りポジション(空売りをしている)のであれば、買い注文を出して買い戻す必要があるわけです。
予想通り株価が下がり、十分な利益がある状態で買戻しができればよいのですが、時としてそうはいかないことがあります。予想に反して株価が上昇してしまい、ロスカット(損切)として空売り玉を買い戻すこともあるでしょう。一般にこのことを「踏む」と言います。ちなみに買い手の場合は「投げる」と言いますね。
踏みが踏みを呼ぶ踏み上げ相場
その上で「踏み上げ」というのは株価上昇によって空売りをしている投資家が次々とロスカット注文を出して「踏む」状態になることによって、その踏みが大きな買い需要となり、株価を押し上げることを言います。
売りが売りを呼ぶ投げ売り相場、セリクラ(セリングクライマックス)の対義語と言えますね。
冒頭で書いた「売りは命まで」という格言の通り、空売りをしている投資家にとって急激な上昇は非常に怖いものです。そのため、買戻しが買戻しを呼ぶことによってそれが大相場(大きな上昇)を生むことがあるわけです。
踏み上げが起こりやすい株
踏み上げ相場となりやすいのは、
- 空売り残高が大きい銘柄
- 出来高の少ない中小型株
こうした銘柄は、状況によっては仕手筋や大口の投資家が“仕掛け”をすることがあります。自身の資金力を使って株価を買い上げることで、空売りをしている投資家の踏みを誘発し、踏み上げ相場となったところで買い上げた株を処分するといった具合ですね。
空売り残高が信用買い残高を上回る「株不足」の状態になると、売り手は逆日歩という追加コストを支払う必要が出てきます。そうした状況も株価押し上げのキッカケとなることがあります。
空売り残高の調べ方
空売り残高については毎週火曜日(第2営業日)の夕方に東証が集計したものが発表されます。こちらは正確な数字ですが、リアルタイム性は弱いです。
一方で、日々の状況については日証金が発表するデータがあります。ただ、こちらは暫定的な数字な上、証券会社が自己資金や自己株で用立てをした場合には数字として反映されないので正確性は弱いです。
踏み上げを狙った投資の注意点
中小型株で空売りが積みあがってきている=踏み上げ期待で買い
という考えは危険な面もあります。そもそも空売り残が増えているというのは、多くの投資家がその会社の株価が下がると予想している前提を抑えておく必要があります。
業績不安がある、倒産リスクがあるなど、買いづらい理由があるケースも多いため安直な投資は危険性も伴います。