新聞、報道でも円高になる度に「比較的安全な資産である円が……」という言葉が枕詞のようにつかわれています。この比較的安全な資産といわれる日本円(JPY)ですが、日本はデフレ経済が続いており、経済成長率も高くないのになぜ日本円が買われるのだろうか?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は投資家の間で不安心理が高まった時に安全な資産として買われ円高になることが多い「日本円」がなぜ買われるのかをまとめてみました。
リスク資産からの逃避先に「円」が選ばれる理由は何なのか?
大きな理由としては日本がデフレにあること。もうひとつは超低金利であることが原因と考えられます。
1)デフレであるため金利が低くても保有に価値がある
日本はデフレ経済から脱却できていません。日本のデフレは2016年現在で約20年近く継続しており、日銀による異次元緩和によって一時的には物価上昇傾向が表れたものの、再びデフレ傾向が出てきており、なかなか解消されません。
デフレというのは物価の下落(通貨の価値が上昇)するということです。つまり、日本円の購買力はデフレ分だけ仮に金利がつかなかったとしても高いということになります。こうした背景があるため、日本円の金利は低いにも関わらず、買われやすいという傾向があるわけです。
2)リスクオフで低金利によるキャリー・トレードの巻き戻しが起こりやすい
日本円の金利は世界の主要通貨の中でも低いです。ゼロ金利政策は2001年から実施されており、2016年になると日銀はマイナス金利政策を打ち出しています。
超低金利通貨はキャリートレードの対象になりやすいとされています。
キャリートレードとは、低金利通貨で資金調達をして高金利通貨を買うというリスク投資が行われやすくなります。キャリートレード時には円が売られて高金利通貨が買われるわけです。
そのため、低金利通貨は売られるといわれるわけです。
投資家心理がリスクオンの状態であれば、よりキャリートレードは活発化しやすいのですが、市場不安が増大して投資家心理がリスクオフ傾向に向くと、価格変動の大きな高金利通貨取引を手じまう(円キャリー取引の解消)を行うわけです。
この際には購入していた高金利通貨を売却して調達資金である日本円を買うという取引となります。
3)日本の対外純資産の引き上げ思惑が生じる
日本は世界最大規模の対外純資産を抱えているという点もリスクオフで円が買われる理由だといわれています。
世界経済が不透明になったという状況は日本人が対外資産を売却して円に戻すのではないか?という思惑が働きます。そうした心理や行動からリスクオフでは円が買われやすくなるわけです。
実際に2011年の東日本大震災のような日本経済に大打撃を与えるような事態が発生した時も円高となりましたが、それはこうした思惑が働いた結果の為替動向ではないかといわれています。
リスク回避的な行動で円が買われる理由のまとめ
上記の2点から投資家がリスク回避的になることで、日本円(JPY)が買われるという状況は、ある程度構造的な問題によって生じていると考えられます。
こうした傾向がずっと続くとは言えないですが、現時点では上記のような理由から日本円が買われやすいと考えることができます。一方で、経済が不安定になった時に円高が進むと輸出企業等の業績悪化懸念が広がって、国内の景気への悪影響が生じるという問題が起こりやすいといわれています。
以上、政治経済が不透明になると日本円が比較的安全な資産として買われる理由をまとめてみました。