逆日歩というのは、株の信用取引において空売り(信用売り)の数量が信用買いの数量を超えたときに発生する、日本証券金融(日証金)の株券調達コストです。
日証金速報が出される当日の19時ごろに、逆日歩が発生する可能性がある株不足の状態が分かったとします。このとき、翌営業日の11時~12時頃までに、逆日歩の金額等が決まるわけですが、その際に「満額」や「零銭」と表記されることがあります。
今回はこの株不足発生時の「満額」「零銭」の意味について紹介していきます。
そもそも逆日歩とは?
逆日歩というのは冒頭にも書きましたが、「信用売り(空売り)数量>信用買い数量」となっている状態に発生する可能性がある株券調達コストです。
信用取引は信用買いをするときは証券会社から資金を借りて株を市場で買います。一方で、空売りをするときは証券会社から当該銘柄の株券を借りてそれを市場で売るわけです。
その際、空売りをするための株は証券会社が用意できる分は用意しますが、用意できない分は「証券金融会社(日証金等)」から借り受けを行います。
このとき、トータルで「空売り残高>信用買い残高」となると、株不足が発生します。空売りをする株が足りなくなるわけですね。そうなると、その不足分の株をどこからか調達する必要があります。
こういう場合は、機関投資家などから株を借りる形になるのですが、その時の調達価格(オークションで決定)が逆日歩となります。
株不足発生時の「満額」と「零銭」
株不足の発生は速報と確報の2段階があります。
日証金速報による株不足と「満額」の意味
毎日19時ごろに行われる日証金速報で株不足が発生するケースがあります。この時点は速報なので確定ではありません。
この時点で翌営業日の10時までに証券金融会社は証券会社に対して、融資の追加申込や貸株の返済申し込みを受け付けます。信用取引による売買は、必ずしも日証金を通すわけではなく、証券会社が独自に引き受けているケースがあるからです。
これによって株不足が解消されることも少なくありません。その場合の表記が「満額」となります。
日証金速報時点では、株不足が発生しているように見えたとしても、実際には株不足じゃなかったという場合ですね。
「満額」と表記されている場合は入札は行われません。当然、逆日歩の金額はゼロです。
株不足が解消されなければ品貸しの入札を実施
融資の追加申込、貸株返済をしても株不足が解消されない場合、株不足が発生したこととなり、日証金は品貸しの入札を実施します。
これによる入札金額が逆日歩となるわけです。
品貸しの入札は、入札条件の低い方法(値段の安い方)から調達を行っていき、株不足が無くなるまで調達していきます。そして株不足が解消した時点での費用が「逆日歩」となるわけです。
逆日歩が「零銭」の意味
ということは、逆日歩が零銭というのは、株不足が発生しており、実際に入札は行われたものの、応札した機関投資家の入札金額が零銭(無料)で応じたということになります。
株不足は生じているけれど、無料で貸してくれる機関投資家がいたから、逆日歩は発生しなかったという意味になります。
逆日歩の満額と零銭の意味の違い
同じ、逆日歩が発生しない「満額」と「零銭」ですが、意味合いは大きく異なります。
「満額」の場合、そもそもトータルで見たら株不足は発生していないことになります。一方で「零銭」は株不足は発生しているわけです。
何が違うか?というと需給です。信用取引の残高というのは制度信用の場合6か月という返済期間があります。
- 信用買いをしている→6か月以内の売り需要
- 信用売りをしている→6か月以内の買戻し需要
を意味します。信用取引の売買状況を知る指標の一つに「貸借倍率」というものがありますが、この貸借倍率が低くなるほど、株価上昇要素になるとされています。
逆日歩零銭という場合は、実際には株不足が発生している状況になっているため、株価にとっては上昇圧力となりやすいといえそうです。
以上、逆日歩発生時の「満額」と「零銭」の意味と違いについてまとめました。