アセットアロケーションという言葉を聞いたことがないでしょうか?アセットアロケーションとは資産配分という意味です。資産を異なる複数の資産に配分するという意味ですが、目的はリスクを低減しながら効率的な運用を行うために投資ポートフォリオを複数の異なる資産に配分して運用することを指します。このアセットアロケーションという考え方は長期投資においてはきわめて重要な要素であり、現代ポートフォリオ理論では、投資の成否の約8~9割はアセットアロケーションによるものともされています。今回はこの「アセットアロケーション(資産配分)」という考え方について説明していきたいと思います。
アセットアロケーションとは何か?ポートフォリオとの違い
アセットアロケーションというのは「資産配分」という意味です。同じような意味で「ポートフォリオ(金融資産一覧)」という言葉もありますが、これとはどのように違うのでしょうか?
まず、ポートフォリオというのは保有する金融資産の一覧という意味で、どのような金融商品にどれくらいの金額を投資しているのかという現状を意味しています。一方のアセットアロケーションというのは資産をどのように配分するかというルール、方針を意味しています。
アセットアロケーションは投資で重要と言われる「分散投資」という考えを理論的に体系付けたものです。
当ブログで以前「分散投資を成功させる3つのポイント」でも説明したとおり、相関関係の異なる資産(アセットクラス)へ分散投資することで期待リターンを維持したままリスクだけを引き下げることが出来ると説明しましたが、その理論的部分がアセットアロケーションとなるわけです。
相関関係がマイナスとなる投資商品(アセットクラス)に分散して投資をすることで期待収益率は維持した上でリスク(変動幅)を小さくすることができると言うものです。
リスク(変動幅)と期待リターン
ん?リスクが減ったらリターンも小さくなるんじゃないの?
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。例を挙げます。
Aという投資商品があり、これは好景気のときは+15%、普通のときは+5%、不景気のときは-10%の成績になるとします。また、Bとういう投資商品があります。こちらは好景気のときに-10%、普通のときは+5%、不景気のときは+15%の成績になるとします。好景気は20%、普通は60%、不景気は20%で訪れるとします。
投資商品Aのリスク(変動幅)は-10%~+15%の25%となります。一方の期待リターンは0.15×20%+0.05×60%+(-0.10×20%)=0.03+0.03-0.02=0.04(4%)となります。
この投資商品Aのリスク(変動幅)は-10%~15%の25%であり、期待値としては4%になるということがわかりますね。一方のBは同様に、リスク(変動幅)は-10%~15%で、期待値は同じ4%となります。
ここでのポイントは好景気のときと不景気のときの成績が反対であると言うことです。このAとBという投資商品に同額を投資した場合、好景気や不景気のときのプラス、マイナスの収益がそれぞれ相殺しあうことによって、リスク(変動幅)を小さくすることができます。
AとBそれぞれに投資をした場合のリスク(変動幅)は25%(期待収益率4%)、半分ずつ分散投資した場合のリスク(変動幅)は0%(期待収益率4%)となります。
分散投資をすることによって変動幅を小さくすることが出来るわけです。一方の期待収益率は落ちていません。これが、相関関係が異なるアセットクラスに分散して投資することによるリスク分散の効果です。
※上記はわかりやすいよう、極端に単純化してあります。
アセットアロケーションの考え方
アセットアロケーションの基本は、投資する市場と投資する場所をベースに考えます。
たとえば「株式」「債券」「不動産」「商品(コモディティ)」といった投資対象や、「日本」「米国」「先進国」「新興国」「世界全体」といった投資する場所です。これらをグループとして、同じようなリターンやリスク特性を持つ投資対象のことを「アセットクラス」と呼びます。
アセットアロケーションというのは、これらのアセットクラスに対してどのように資産配分をするかということですね。
ものすごく、簡単にアセットクラスを考えると国内株式、国内債券、外国株式、外国債券といった区分になるでしょうか。
アセットアロケーションにおける期待リターンとリスク
アセットアロケーションによる組み合わせの基本は「期待リターンに対してどれだけリスクを抑えるか」ということです。
当然ですが、期待リターンを高めるためにはそれだけ高いリスクを背負う必要があります。これは投資の鉄則ですね。
たとえば先ほどの例では4%の期待リターンを得るためのリスクとして、分散投資しなかった場合は25%の変動幅、分散投資をした場合は変動幅なし(0%)という結果になりましたが、アセットアロケーションによる分散投資は同じ期待リターンを得るのに対して変動幅(リスク)を抑えることを目的にしています。
どうやって組み合わせを考える?
アセットアロケーションはその人がとりうるリスクの大きさによって変わってきます。安全な運用を求めるケースでは、リスクを小さくする代わりに期待リターンも小さくなります。たとえば、私たちの年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は国内債券中心の期待リターンを抑える代わりに、低いリスクのアセットアロケーションを行っています。
一方で、新興国株式などの期待リターン、リスクの大きいアセットクラスへの投資を中心とすれば当然、リターン、リスクともに大きくなります。
あなたにあった組み合わせはその資金の目的やあなたの年齢などによって変わってきます。リスクを積極的にとって大きく殖やすことを目的とするのか?それとも、インフレやデフレに負けないための着実な財産形成を目的とするのか?それらによってずいぶんと構成内容はかわってくるでしょう。
どうやってアセットアロケーションを組めばいいの?
一番簡単なのは投資信託(特にインデックスファンドやETF)を使って組む方法です。
日本株ならTOPIXや日経225をベンチマークとしているインデックスファンドやETFなどがあります。外国株式ならMSCI-KOKUSAI指数、債券ならシティグループ世界国債インデックスなどのベンチマークがあります。
(ベンチマークというのは、参考となる指標のこと。くわしくは「こちら」。また、代表的なベンチマーク一覧は「こちら」を参照。)
投資信託への投資というと「まず銘柄(ファンド)選び」という考えをお持ちの方も多いかもしれませんが、アセットアロケーションという見地から言うと、個別のファンドより、まずどのアセットクラスに投資をするかを決めて、それから投資するファンドを決めるという方法がおすすめです。
その際に重要なのは「手数料」です。投資信託はファンドによってかなり手数料に差があります。販売手数料はもちろん、信託報酬と言った手数料は投資のリターンを「確実に下げる」ものです。コストには強くこだわりましょう。
参考:投資信託と手数料
アセットアロケーションの例
以下はあくまでも簡便的なものとなります。
・国内株+外国株(世界株式)の組み合わせ
それぞれ1:1程度の投資をする。比較的ハイリスク型。
・安全な運用を志向する場合
年金機構(GPIF)のアセットアロケーション国内債券70%、国内株12%、外国債券8.5%、外国株9.5%のバランスで運用。(現預金を省略)
アセットアロケーションはモニタリングする
投資する資産配分を決めたらそれでおしまいではありません。たとえば、国内債券、国内株、外国債券、外国株にそれぞれ毎月1万円を投資するアセットアロケーションを実施したとしましょう。
しかしながら、投資商品は常に変動します。変動によって当初決めた配分割合からずれることが多々あります。上の例だとそれぞれ25%ずつの投資となるわけですが、国内株やが大きく上昇したことで下記のように変動したとします。
国内債券:10% (配分割合25%)
国内株式:40% (配分割合25%)
外国債券:20% (配分割合25%)
外国株式:30% (配分割合25%)
このようになったとき、配分割合を当初決めた水準(この場合それぞれ25%)に戻すことを「リバランス」と言います。
上記だと国内株式と外国株式の一部を売却して、その他のアセットクラス(資産)に対して投資することになります。
リバランスのメリット
リバランスのメリットは特定のアセットクラスの相場が大きく上昇したときに、値上がりした資産を売却して相対的に割安となっている資産に投資をすることで「割高なものを売り割安なものを買う」という投資が可能となるわけです。
実際の相場においても分散投資をしてリバランスをしたものをしなかったものでは、一定のリバランスを行うほうがより効率的な運用が出来ています。
リバランスのタイミング
リバランスのタイミングですが、「一定以上の乖離が生じた場合に実施」「一定期間ごとに実施」という二つの方法があります。アセットアロケーションの基本配分割合から10%程度の乖離が起きた場合、または3年程度の周期でリバランスを行うのが効率的なようです。
(あまり頻繁にリバランスを実施すると投資信託の売買コスト(手数料や税金)によってかえってマイナスとなる場合もあります)