損失回避性(そんしつかいひせい)とは損失回避バイアスなどとも呼ばれる行動心理学(行動ファイナンス・行動経済学)の用語です。名前からもわかりますが、人は同額の利益と損失があれば利益よりも損失の方を大きく評価するということを意味しています。つまり10万円儲けるのと10万円損をするというものでは損をする方が嫌というわけです。
このような行動は時として投資において失敗をもたらすリスクがあるということを理解しておく必要があります。
損失を過剰に恐れてしまう問題
投資対象が株式であろうが、為替であろうが損失回避性(損失回避バイアス)によって人は損失を恐れます。
10万円の含み益と10万円の含み損は心理的に同額とは受け止められないようです。
そのため、自分の大切なお金を運用する個人投資家は含み損がでていてもなかなかそれを確定させることができず、ズルズルと保有し続けるケースが多く、逆に利益が出るとサッと売却して利益確定してしまうというものです。
たとえば、株価が500円の株に投資をしたとします。当初は50円増の550円を利食いライン、50円減450円を損切りラインとして決めていたとしましょう。
予想通り株価が上昇して525円にまで上がりました。このときの心理はこうです。
今は525円に上がっている。ここから25円あがって550円まで上がるのを待つ。でも、25円下がって元の値段に戻ってしまうかもしれない。
どちらも25円の利益or損失なのですが、損失回避性(バイアス)によってここから25円下がることが強く意識されてしまいます。そのため、下がってしまう恐怖が出てきて、本来なら550円と決めていた利食いラインよりも下で利益確定をしてしまうのです。
利食い千人力という言葉もある通り、利食い自体が決して悪いわけではありませんがトータルで利食いが早く、損切りが遅いというのは問題です。
「コツコツドカン」でやられないために。
もちろん、投資の勝率によっても左右されるわけですが、買った時の利食いは早く、負ける時の損切りは遅くなってしまうと、コツコツ稼げるかもしれないけど、負ける時にドカン負けてしまう、いわゆる「コツコツドカン」みたいな状態になりやすくなります。
仮に投資の勝率が50%だとします。1取引当たりの損切りのラインと利益確定のラインを金額ベースで考えた場合、利益確定ラインの方が上でなければ確率的に負けます。
もちろん勝率が70%、80%となっていけば話は別ですが、プロの投資家だってそんなに高い勝率では勝てません。
ということは、早い利食いと遅い損切りを繰り返していると必然的に「負けやすい取引」となってしまうわけです。
一回の取引で10万円の損失を損切りラインとするのであれば、最低でも10万円以上の利益は売買で取れるようにしておく必要があります。
私たち投資家は、人には損失回避性があるということを理解した上で、利食い、損切りの判断を行っていくことが大切です。
もし、どうしても損切りできない、利食いが早くなってしまうというのであれば、OCO注文ができる証券会社を使うなどして機械的な利食い、損切りを試してみるというのもいいかもしれませんね。
参考:株取引でのOCO注文。損失を限定しながら利益確保を狙う。