それぞれ、相場格言の一つとして知られる「逆日歩に買いなし」と「逆日歩に売りなし」という言葉。お互い矛盾するように感じるそれぞれの格言ですが、どのような意味があるのでしょうか?
今回は逆日歩の説明とこの二つの格言の相互的な意味について考えていきたいと思います。
そもそも、逆日歩とは?
逆日歩というのは信用取引で信用売りが買いよりも多い状態で、株不足が生じた時に、売り手が負担するコストです。
信用取引では、空売りをするとき証券会社は証券金融会社という株券の調達などを行っている会社から株を借りて、それを投資家に貸して空売りをするという形になります。
信用取引では、「信用買いの残高」>「信用売りの残高」であれば、バーター取引が成り立ちますが、「信用買いの残高」<「信用売りの残高」となった場合、証券金融会社は空売り用の株を外部から調達(借りてくる)必要が出てきます。
このとき、その調達のためにかけるコストが「逆日歩」となります。
このコストは「空売りをしている投資家」が負担して、株を貸してくれる人たちに渡されます。外部でその株を貸してくれた人はもちろんですが、信用買いをしている人も株を売り手に貸しているのと同じことになりますので逆日歩を受け取ることになります。
逆日歩は1日単位で1株につき◯銭といった形で計算されます。
株不足が深刻になればなるほど、空売り用の株が集めにくくなり、その分高額な品貸料が必要となりますので逆日歩は高騰していきます。
参考1:逆日歩と信用取引
参考2:逆日歩と株価への影響
逆日歩に売りなし/逆日歩に買いなしという二つの格言
逆日歩に関する相場格言の中に「逆日歩に売りなし」と「逆日歩に買いなし」という2つの格言があります。見た感じ2つの格言は矛盾していますよね。
相場格言にはそういったものも多いですが、どちらにも言い分(?)はあります。それぞれの格言を意味や背景を見ていきましょう。
逆日歩に売りなし
逆日歩は信用取引の売り手が追加のコスト負担をしなければなりません。
一方の買い手(信用取引での買い手)にとっては逆日歩を受け取ることができます。
需要と供給という需給をベースに考えると、逆日歩の発生は買い手にとって非常に有利な状況だと言えます。
高額な逆日歩がついたような場合には、売り手が買い戻しに動くことがあり、それにより買い需要が発生、結果として株価が上昇することで、損失に耐えられなくなった別の空売りをしている投資家が買い戻すという、いわゆる「踏み上げ相場」となる可能性があることをしめしている格言と言えるでしょう。
結果として、相場が仕手化して大きく上昇するケースもあります。
※このような空売りの買い戻しを「ショートカバー」ともいいます。
逆日歩に買いなし
逆日歩に買いなしという格言はもっと長期的に見ている格言だと考えられます。
たしかに、逆日歩が発生するということはショートカバー(踏み上げ)によって需給面を見れば買い手に有利といえます。
ただ、全体として「なぜ空売りが増加して株不足が生じているのか?」ということも合わせて考えるべきでしょう。
空売りの残高が増加しているといことはそれだけ「売りたい」と考えている投資家が多いというわけです。
業績が悪い、目先の見通しが悪いといったように悪材料を抱えているケースが少なくないわけです。
そうした銘柄であれば、一旦需給の調整がつけば、再度売りが入りやすい状況になり、下りやすい状況になるのではないかという格言です。