債券投資

個人向け社債が投資家にとってお勧めできない理由

bond近年、企業などが個人投資家を対象にした小口社債(個人向け社債)の発行を増やしています。こうした個人向け社債への投資は個人投資家にとって本当に有利なのでしょうか?

結論から言うと、こうした社債への直接投資は基本的には控えるべきだと思います。それは発行体の信用リスクが読みにくいことと、万が一の場合を考えると魅力的な債券に投資がしづらいという点が挙げられます。

今回は、個人投資家が個人向け社債に投資をするリスクと、それに代替する投資方法などを検証していきます。

社債を評価するために必要なこと

まず、発行される社債が本当に魅力的かどうかを評価する必要があります。
そのためには「満期までの年数」「発行体の信用リスクの大きさ」「クーポン(利回り)」の3つの要素を考える必要があります。

個人向け社債が発行される時、個人投資家にとって明らかになるのは「クーポン(利回り)」のみで信用リスクの大きさは自分自身で判断する必要があります。

ところが、こうした信用リスクの大きさを個人投資家が判断するのは極めて困難です。

 

社債における信用リスクとは何か?

債券というものは「発行体が破綻した場合」には元本または利息が戻ってこないというリスクがあります。つまり、債券投資をするときに重要なものは「無事償還されるかどうか?」ということです。

そのためにはその会社が期間中に倒産しないかどうかを見極める必要がありますが、それはとても難しいことです。正直プロだってわかりません。それを個人が判断するというのは極めて困難です。

信用リスクを評価するものとして「格付会社」があります。信用格付けという指標を付けており、その会社の短期的、中期的な健全性を評価しています。(参考:債券投資と信用格付け

ところが、この格付けについても結構いい加減なところがあります。それまでは良い格付けであっても、問題が発生したとたんに格付けが急激に下がり、あっさり倒産といったような事例もあります。

たとえば「個人向け社債と過去の破たん(デフォルト)事例」でも書かれていますが、武富士などはあっという間に格付けが下がり、あっという間に倒産したわけです。

そのため、信用格付が高評価だから絶対に大丈夫ということはありません。満期1年のような短期債ならともかくとして、満期が5年、10年といった長期債券は格付けが高いからと言って安心できるものではないと思います。

 

発行される個人向け社債にはジャンク債も

皆さんもきっとご存知の大企業「ソフトバンク」が個人向け社債(5年債:ソフトバンク株式会社第46回無担保社債)を発行しています。

名前もよく聞く会社だし、大きな会社だから安心できると考える方も多いかもしれません。

同社の信用格付けはBa1(ムーディーズ)です。この水準はいわゆる「投機的格付け」であり、債務履行に当面問題はないが、将来確実とはいえない。という評価がされています。

日本でも知名度が高いソフトバンクですが、発行する債券に対する健全性が高いわけではないということを理解して投資している人はどのくらいいるか疑問です。

 

債券投資は「コツコツドカン」になりうる

こうした虎児向け社債への投資は「コツコツドカン」になりうる商品です。
ローリスク・ローリターンの運用商品ですが、一つ間違えば元本が全く戻ってこないというリスクだってあります。

コツコツドカン
コツコツと利益を積み上げていくも、一つの失敗でドカンとやられてしまい大損すること

個人投資家は機関投資家と比較してリスク耐性は極めて低いです。安定運用と考えていた債券投資でドカンとやられてしまうと大きなダメージを受けてしまう恐れがあります。

もちろん、こうしたリスクは株も同じに存在するわけですが、株式投資の場合は売買市場が整備されていることもあり、売ることも比較的容易です。

債券の場合も、保有する社債を証券会社に売ることは可能ですが、相対取引となるため、証券会社(買い手)の言い値でしか売れないこと。
また、信用不安が発生している状態のとき、債券価格は下落インパクトが大きいことから信用リスクが大きくなった段階での損失はリターンと比較して大きいです。

このような観点から、個人投資家はいわゆる「個人向け社債」については手を出すのはあまり得策ではないと思います。

 

社債投資に代わる運用を考える

2016年1月には日銀によるマイナス金利政策がスタートするなどして金利で運用するタイプの商品の利回りが大きく低下しています。

個人向け国債についてもマイナス金利導入以降は最低金利水準である0.05%のままです。こうした状況で少しでも有利に運用しようと思う時、社債投資ではどうしてもリスクが高くなってしまいます。

 

金利の高いネット銀行系の定期預金を活用する

そう考えたときのポイントとしては、金利が高めのネット銀行系の定期預金を利用するという手が有効かと思います。ネット銀行でも預金保険の対象なので1000万円+利息は確実に保護されます。

預金金利を見ても、0.x%台の預金もキャンペーン等で登場することはあるので、金利の低い社債にわざわざ投資をするよりもメリットが大きいと思います。

ちなみに当ブログでは、ネット銀行の預金金利について「ネットバンク金利ランキング」にて毎月最新の金利情報をお届けしているので、こちらもぜひご参照ください。

 

少なくとも、2016年現在において個人向けの社債投資はあまりおすすめできる状況ではありません。

以上、個人向け社債が投資家にとってお勧めできない理由を説明しました。

 

ABOUT ME
高山一郎
高山一郎です。株や投資に関する情報発信を始めて10年以上、投資歴は15年以上です。実際の経験に基づく役立つ投資やお金に関する情報を発信していきます。