投資全般・コラム

資産運用と家計の損益計算書分析

前回の記事「資産運用と家計のバランスシート分析」の続きです。今回は「損益計算書(P/L)」を使った家計診断です。損益計算書は名前の通り「損益(収入と支出)」を分析するための会計資料の一つです。本来は企業財務分析向けのツールなのですが、一般家計の診断にも十分応用することができます。
今回は家計の損益計算書の書き方をまとめていきます。

損益計算書(Profit and Loss Statement)とは

損益計算書は損益を計算して分析するためのツールです。
今回は本来企業財務分析向けの損益計算書を家計向けにアレンジした形で、家計診断や資産運用への活用について考えていきたいと思います。

前回記事の「資産運用と家計のバランスシート分析」と連動させた話となりますので、こちらの記事もご一読いただけると理解が深まるかと思います。

 

損益計算書の計算方法

損益計算書は、家計における金銭の動きを「収入」と「支出」に分類して計算していきます。月単位で細かく計算してもよいですが、年単位でざっくりとしたものでも結構です。
面倒と思われるかもしれませんが、ぜひ作ってみましょう。

 

収入の部

一般的には、給料収入などの収入がここにあたります。また、不動産投資をしている方は賃料収入、株の配当で暮らしている方は配当金などの収入もここに入ります。
こうした収入を項目別に並べて加えていきます。総額があなたの家計の収入の部となります。
(家計全体を考える場合は配偶者の方に収入がある場合はそれも加えるようにします)

また、税金を後で考慮するのは面倒なので、税引き後の収入(手取り相当)を収入の部に入れるようにしておきましょう。(ただし、不動産投資のように後で確定申告が必要になる場合は別途計算します)

 

支出の部

支出額を計算していきます。すでに家計簿を付けているようなご家庭は計算が楽でいいですね。
食費、水道光熱費、衣服費、娯楽費、教育費、住居費、交通費、レジャー費、交際費、保険料、租税公課(税金)、ローン返済費用などが挙げられます。ある程度目的・利用別に分類しておくことが後々の損益計算書分析や家計改善の役に立ちます。
(ただし、あんまり細かくやるとその分集計や計算が大変になりますので、ある程度で大丈夫です)

また、これらの支出項目を「固定費」と「変動費」にざっくりと分類します。

固定費
収入の増減や行動の有無によって変化しない費用のこと。たとえば家賃、保険料、住宅ローン等のローン返済費用、自動車関連の費用、税金などは固定費にあたります。

変動費
固定費以外の費用です。ある程度自分でコントロールすることができる費用になります。レジャー費や食費などはある程度自分で削ったり、増やしたりはできますよね。

 

家計の損益計算書を分析する

上記の収入の部から支出の部を差し引くことで家計が黒字か赤字かを分析することができます。

なお、この年(月)だけの臨時的な収入や支出が無いかを確認してください。こうした臨時的な収入や支出は、経常的な収支分析という点からは除外してもかまいません。

今回の家計診断では減価償却費などの非金銭項目は含んでいませんので、ここが赤字になっている場合は、家計からお金が流出している状況(貯金を取り崩している状態)となります。
一方、黒字の場合は貯蓄ができている状況ということですね。まず、黒字なら一安心、赤字の場合は一部の方を除き何とか収支を改善する必要があります。

 

損益計算書が赤字の方

このままではじり貧になっていきますので、なんとかして対応をして黒字化達成を目標にしましょう。
改善するためには「収入を増やす」という方法と「支出を減らす」という当たり前ですが2つの方法があります。

中でも、取り組みやすく家計改善に効果を発揮するのが「固定費の削減」です。固定費は毎月の行動の有無によって変化しない費用なので、一旦改善できれば経費削減効果が継続します。
より安い住宅への引越や、生命保険の見直し、自動車など固定費用が発生する動産を手放すなどが効果的な方法として挙げられます。あとは、娯楽系の費用を見直すことも挙げられます。
下記にいくつか節約系のサイトへのリンクを貼っておきますので、ぜひ経費削減にチャレンジしましょう。

参考
引越しのコツと業者の選び方
生命保険見直しガイド
節約.net 家計でできる節約術

 

損益計算書が黒字の方

まずは一安心といったところかと思われます。黒字の場合でも家計見直しによって黒字をさらに大きくすることができますので、どこかに無駄がないかをチェックして、できるとところは節約していきましょう。
また、黒字の場合は「投資」によってさらに、収入を増やすというとこも検討していきましょう。

なお、投資を考える場合、「家計のバランスシート」のところでも解説している通り、家計内の資産状況も考えた上での投資計画が必要になります。下記はバランスシートから考える、損益計算書が黒字の方向けの投資ポイントです。

1.バランスシート上で「現金・預金」等の短期金融資産が少ない
→最低でも6カ月分程度の生活資金は現金預金として確保しましょう。できれば1年~2年くらいの生活費があると安心して運用できます。どうしても運用したいというのであれば、流動性が高い「個人向け国債」などがおすすめです。

 

2.バランスシート上に短期負債(キャッシング・カードローンなど)がある
→早めに借入を返済します。短期負債がある場合は運用よりも、返済を重視しましょう。
(参考:借金返済は効率的な資産運用と考えよう

 

3.バランスシート上に長期負債(住宅ローン等)がある
→バランスシートを作って「債務超過」の状態でないかどうかをチェックします。そのうえで、住宅ローンの繰上返済に投資資金を回すべきか、それとも運用すべきかを判断しましょう。
すでに住宅ローンというリスクを負っている状態なので、十分な現預金等の資金が確保できていない場合は株式などのリスク資産よりも債券などの比較的低リスクの投資商品重視のポートフォリオの方が推奨されます。

 

4.バランスシート上で純資産(資本)の割合が多く流動資産も多い
→もっとも投資に向いている形です。リスクに対する対応力も十分にあるバランスシートとなっていますので、年間収支の黒字部分を投資に振り向けることをお勧めします。

いかがでしょうか?家計の損益計算書づくり。ぜひ試してみてくださいね。

 

参考サイト
損益計算書と財務分析
収入と支出のチェック(家計診断の基礎知識)

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高山一郎
高山一郎です。株や投資に関する情報発信を始めて10年以上、投資歴は15年以上です。実際の経験に基づく役立つ投資やお金に関する情報を発信していきます。