日銀によるマイナス金利政策を受けて、短期の債券で運用をしているMRFやMMFがピンチです。マイナス金利導入で短期の貯蓄型の公社債投資信託MMF(マネーマネジメントファンド)の利回り低下により販売を停止しています。今度は証券会社における預かり金的な扱いで運用されていたMRF(マネーリザーブファンド)についても危機を迎えています。
MMFと違い、MRFは顧客からの投資資金の待機として多くの証券会社で利用されているだけにこの問題は危機的ともいえるかもしれません。
MRFとは何か?
MRFは公社債投資信託という投資信託の一種です。運用は短期の国債などで行われています。利回り自体は預金とほぼ変わらない程度ですが、なんと残高は日本国内で11兆円あまりの規模があるファンドです。
このMRFですが、投資家が証券会社に預けた資金(現金)の受け皿として利用されています。そのうえで、株の売買などをする時はそのMRFを解約して株を買うという形を取ることにしています。つまり、MRFは証券会社における「預金」のような性質を持つ投資信託なのです。
日本では野村MRF(野村アセットマネジメント)やダイワMRF(大和投資信託)、日興MRF(日興アセットマネジメント)など8社がMRFの運用を行っています。
ちなみに、大手の名前が出ていますが、ネット証券の場合でも顧客からの預かり資産(現金)は上記のMRFとして預かっているケースがほとんどです。
SBI証券のSBIハイブリッド預金や楽天証券のマネーブリッジなどは例外。
(参考:ハイブリッド預金とマネーブリッジ、お得なのはどっち?)
MRFも運用が悪化、マイナス運用となる可能性も
2016年1月のマイナス金利導入で長期国債の利回りが一時マイナスに転じるなど安全な日本の債券による運用は厳しさを増しています。
MRFやMMFといった公社債投信は短期の国債への投資を通じて低リスクで安定的な運用を行っているわけですが、こうした安全な運用の利回りがマイナスとなるのはMRFにとっては危機的な状況になるわけです。
実際に、2016年2月にはMRFの運用会社などが金融庁に対して規制の緩和などについての要望を行ったと報じられました。
投資家サイドからすると仮に、MRFの運用がマイナス金利になれば、わざわざ投資資金をMRFに預けておく必要はなくなります。投資家としてはそうした証券会社(MRF)からは資金を引き揚げることになるでしょう。
ちなみに、2016年2月17日時点の野村MRF、大和MRF、日興MRFの運用状況は下記の通りです。
野村MRF:0.017%(2/5~2/12)
大和MRF:0.019%(2/5~2/12)
日興MRF:0.014%(2/5~2/12)
各社ともかろうじてプラスといったところですね。ちなみに、大手都銀の普通預金の金利は0.02%(ただし、三井住友銀行は2/15に0.001%に引き下げ)となっており、普通預金レベルの利回りは維持している状況のようです。
ちなみに、MRFやMMFと言った公社債投資信託の元本割れのリスクについては「MRFやMMFは元本割れはしないの?」でも記事にしているので、こちらもご参照ください。
預かり金への変更も問題がある
MRFという運用がマイナス金利になるのであれば(損失補てんができないのであれば)、投資家としてはわざわざMRFに預けておく必要性は低くなります。
となると預かり金と言う形で証券会社にお金を預けるという方法もありますが、これも現実的には厳しいです。証券会社は顧客の財産と自社の財産とを「分別管理」する必要があります。
具体的には信託銀行の信託サービスを利用してお金を自社(証券会社)と切り離すわけです。
こうすると当然ですが、信託銀行側から証券会社に対して手数料の請求がなされることになるはずです。証券会社としては顧客からの預かり資産が増えれば増えるほど維持コストが膨らむというジレンマに陥ることになるわけです。
口座維持手数料の復活か?
当然ですが、そうした形になると証券会社にとって「動かない資金を抱えておくこと」がコストの増大を招くことになります。そうなってくると考えられるのは口座維持手数料(口座管理手数料)の復活ということでしょうか?
ネット証券ではもともと無料とするところが多かったですが、10年前くらいは大手の証券会社では大半が年間3000円程度の口座維持手数料・管理手数料を徴収していました。
また、このような状況に戻ってしまうという可能性も否定できませんね。
以上、MRFがマイナス金利になるかもしれないというお話でした。